バイナリーオプションの「プット」は、判定時刻の判定価格が、選んだ権利行使価格を下回っていた(未満だった)ときに、ペイアウトを受け取れるオプションです。国内でバイナリーオプションを扱うGMOクリック証券・楽天証券・みんなのオプション・GMO外貨・外為どっとコムの5社は、いずれも取引ルールでプットの条件を「未満」または「<」と書いています(2026年9月22日確認)。条件を満たしたときに受け取る額は1枚(1Lot・1口)あたり1,000円です。
名前から「プット=売り注文」と受け取られがちですが、そうではありません。国内5社では、プットはお金を払って「購入」するもので、下がる幅がいくら大きくても受け取る額は変わらず、外れたときに失うのは支払った購入価格までです。FXで通貨を売るのとも、一般のオプション取引でいう「売る権利」とも、損益の形が違います。
この記事では、プットの条件の書き方を各社の規程で確かめたあと、GMOクリック証券が載せている「円高」の損益例で支払いと受け取りを追い、一般のプットやFXの売りとの違い、購入価格から読めること・読めないことを順に整理します。ラダー取引の画面で「下」を選ぶときの操作はラダー取引の下を選ぶとはで扱っているので、ここでは用語としてのプットが何を約束しているのかに絞ります。
プットの条件は「未満」:6社の規程での書き方
まず、各社がプットをどう書いているかを並べます。名前は少しずつ違いますが、条件はすべて同じ向きです。
| 会社(サービス) | 公式ページでの名称 | 条件の書き方 | 下がる側に立つ方法 |
|---|---|---|---|
| GMOクリック証券(外為オプション) | ラダーバイナリープットオプション。損益の説明では「円高予測」 | 判定価格<権利行使価格 の場合 | プットを購入 |
| 楽天証券(らくオプ) | プット・オプション | 判定価格が権利行使価格未満の水準となった場合 | プットを購入 |
| みんなのオプション | プットオプション | 判定価格<権利行使価格の場合、ペイアウト発生 | プットを購入 |
| GMO外貨(オプトレ!) | 店頭通貨バイナリープットオプション | 判定価格が権利行使価格未満の場合 | プットを購入 |
| 外為どっとコム(外貨ネクストバイナリー) | プットオプション | 判定価格<権利行使価格 の場合 | プットを購入 |
| IG証券 | プットの扱いなし(取引概要の「コール、プットの扱い」は「コール」のみ) | - | コールを新規に売る |
表1でまず押さえたいのは、条件に等号が入っていないことです。判定価格と権利行使価格がまったく同じ値になった場合、プットは条件を満たしません。GMOクリック証券の損益の説明は、円高予測について「判定価格≧権利行使価格の場合、プレミアムが損失となります」と書いています。同値のときに引き分けや返金になる仕組みは、各社の規程にありません。等号がコールの側にだけ付いている理由と影響は判定価格と権利行使価格が同じになったときで詳しく扱っています。
もう一つは、GMOクリック証券では「プット」が「円高」という言葉で説明されていることです。正式な名前は取引ルールの判定処理の項にある「ラダーバイナリープットオプション」ですが、損益の説明や両建の説明では「円高」と書き、対ドル通貨ペアについては「ドル高」と書き分けています。米ドル/円のプットは、表示レートが下がる側、つまりドルが下がり円が上がる側に立つ取引なので「円高」と呼べます。ユーロ/米ドルでは、表示レートが下がるのはユーロが下がり米ドルが上がるときなので「ドル高」です。「プット=円高」と覚えるのは、対円の通貨ペアに限った話だと覚えておくと取り違えません。円高・円安と通貨ペアの読み方は円高・円安とバイナリーオプションで確認できます。
IG証券にはプットという商品がありません。下がる側に立つ方法は後の節で説明します。
GMOクリック証券の「円高」の例で、プットの損益を追う
条件を言葉で読むより、実際の金額で追ったほうが分かりやすい部分です。GMOクリック証券は「損益(外為オプション 予備知識)」で、次の例を載せています。
- 権利行使価格1ドル96.90円の「円高」ラダーオプションを、1枚450円で5枚購入する
- 満期(判定時刻)まで保有し、判定価格が96.80円だった
- 損益は2,750円の利益
同社は円高予測の損益を「判定価格<権利行使価格の場合、ペイアウトが支払われ、ペイアウトとプレミアムの差額が利益となります」と説明しています。ここでいうプレミアムは、他社でいう購入価格のことです。96.80円は96.90円より低いので条件を満たし、1枚あたり1,000円から450円を引いた550円が利益、5枚で2,750円になります。
図1で分かるのは、プットの結果が「境目のどちら側か」だけで決まることです。判定価格が96.80円でも、それより大きく下がっていても、受け取りは1枚1,000円のままです。反対に、判定価格が96.90円ちょうど、またはそれより上だった場合は、受け取りが0円になり、支払った2,250円がそのまま損失になります。どれだけ上がっても損失が2,250円を超えることはありませんが、どれだけ下がっても利益が2,750円を超えることもありません。
もう一つの見方として、損失の額は購入した時点で確定しているという点があります。GMOクリック証券の取引ルールは、新規取引は購入のみで「取引による最大損失額は購入金額と同額のため、証拠金は必要ではありません」「ロスカットはありません」と書いています。プットを買った人が判定までに追加でお金を求められることはありません。判定前に売却して決済することはできますが、そのときの損益は売却価格で決まり、判定での受け取りとは別の話です。
もとの意味は「売る権利」
「プット」という言葉は、バイナリーオプションのために作られたものではありません。GMOクリック証券は、オプション取引を「ある商品を将来の特定の期日に、特定の価格で買う権利、または売る権利を売買する取引」と説明し、売る権利のことを「プットオプション」と呼ぶとしています(買う権利はコールオプション)。
一般のプットの買い手はプレミアムを払って売る権利を手に入れ、条件がそろえば、権利行使価格で原資産を売ることができます。相場が権利行使価格より下がっていれば、市場より高い値段で売れるので得になります。相場が上がって権利が役に立たなければ、権利を使わずに終え、損失は支払ったプレミアムの分にとどまります。同社の表でも、プットの買いの損失は「プレミアムの金額分」とされています。
バイナリーオプションは、同じGMOクリック証券の「オプションの種類」の説明では、一般的なオプションに特殊な条件を付け加えた「エキゾチック・オプション」の一つで、「満期時点で、原資産価格が権利行使価格に達した場合、一定の金額を受け取るオプション」です。また、権利行使のときに商品を受け渡さず差額だけをやり取りする「差金決済型オプション」の一部とも書いています。
つまりバイナリーのプットを買っても、ドルを96.90円で売る権利が手に入るわけではありません。手に入るのは「判定価格が96.90円未満なら1枚1,000円を受け取る」という約束です。名前は同じ「プット」でも、下がった幅が大きいほど得になる一般のプットと違い、バイナリーのプットでは下がった幅が結果に関係しません。この違いは、コールの側でも同じことが起きています。コールの語源と損益の形はコールの意味で図にしています。
「プットを買う」は、FXの「売り」とは別の取引
プットが下がる側の取引だと知ると、「FXで売るのと同じ」と考えたくなります。しかし、支払うお金、利益の出方、損失の上限の3つが違います。
金融先物取引業協会は、FX(外国為替証拠金取引)を、証拠金を事前に入金して行う取引で、「売り買いどちらからでも取引を行える」ものと説明しています。決済は、通貨の現物を受け渡さず、売った値段と買い戻した値段の差額をやり取りする差金決済です。金融庁は、外国為替証拠金取引を「証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品」としています。
図2の中央の列と右の列を比べると、違いがはっきりします。FXの売りでは、下がった幅がそのまま利益の大きさになり、上がった幅がそのまま損失の大きさになります。バイナリーのプットでは、下がった幅も上がった幅も結果の金額を変えません。変わるのは「境目の下にいるか、上(同値を含む)にいるか」だけです。
また、FXの売りは証拠金を預けて始め、損失が証拠金を上回るおそれがありますが、国内5社のプットは購入価格を支払って始め、損失はその額までです。ここで「プットのほうが安全」と受け取るのは早計です。1回ごとの損失に上限があっても、取引を重ねれば損失も積み重なります。上限があることと資金が減らないことは別で、この両面は損失が限定される意味で詳しく扱っています。FXとの損失の出方の違いはFXとバイナリーオプションの損失の違いにまとめました。
プットの購入価格から分かること、分からないこと
プットを買うときに画面に出る購入価格は、そのまま損益の計算に使えます。国内5社ではペイアウトが1枚1,000円で固定なので、当たれば「1,000円−購入価格」が利益、外れれば購入価格が損失です。ここから、損も得もしない的中の割合(損益分岐の勝率)は「購入価格÷1,000円」で求められます。
図3のとおり、GMOクリック証券の例の450円で買ったプットなら、損益分岐は45%です。同じ条件のプットを何度も買い続けたとして、当たる割合が45%を下回っていれば、回数を重ねるほど資金は減ります。この計算は「ペイアウト1,000円・手数料などほかの費用なし・毎回同じ購入価格」という仮定を置いたもので、実際の購入価格は回号、選んだ権利行使価格、判定までの残り時間、相場の状況で変わります。
一方で、購入価格から「プットが当たる確率」を読み取ることはできません。楽天証券は、取引価格が「ペイアウト額=コール・オプションの取引価格+プット・オプションの取引価格」とはならないと書いています。外為どっとコムも、同じ権利行使価格のコールとプットの購入価格は理論値にリスクプレミアムを加算した価格で、「ペイアウト額 = コールオプションの購入金額 + プットオプションの購入金額」とはならないとしています。GMO外貨は、スプレッドを40円とした計算例で「ペイアウト額1,000円≠コール価格620円+プット価格420円」と示しています。
この例でいえば、プットの購入価格420円は、1,000円のうち42%ぶんの値段に見えます。けれども、同じ権利行使価格のコールと足すと1,040円になり、1,000円を40円上回ります。購入価格には会社の取り分が上乗せされているので、確率として読むとその分だけずれます。コールとプットを両方買っても損を避けられない理由は、コールの意味の「表と裏」の節で計算しています。購入価格とペイアウトの関係そのものはペイアウトと購入価格の違いで確認できます。
「プットを売る」ことはできるのか
一般のオプション取引では、権利を買うだけでなく売ることもできます。GMOクリック証券の説明でも、プットの売り手はプレミアムを受け取るかわりに、買い手が権利を行使したら権利行使価格で買う義務を負う、とされています。では、バイナリーオプションでプットを売ることはできるのでしょうか。
国内5社では、新規にプットを売ることはできません。
- GMOクリック証券:「新規取引で売却から開始することや、決済取引で購入することはできません」
- 楽天証券:「新規取引としてオプションの売却から開始することはできません」
- 外為どっとコム:「オプションの売り建ての取り扱いはありません」
各社の画面にある「売却」は、すでに購入したプットを判定前に手放して決済する操作です。売りから新しく取引を始める意味ではありません。
IG証券だけは仕組みが違います。取引概要の商品区分では「コール、プットの扱い」が「コール」だけで、そのかわりに新規の買付取引と新規の売付取引の両方ができます。下がる側に立つには、プットを買うのではなくコールを売ります。同社の表では、売りの最大損失は「ペイアウト-プレミアム」、最大利益は「プレミアム受取分」です。結果の向きは他社のプットの購入と似ていても、証拠金取引として扱われ、損失の大きさの決まり方も別です。IG証券での扱いはIG証券のバイナリーオプションと証拠金取引で詳しく扱っています。
プットについてよくある疑問
プットは「下がったら勝ち」と覚えてよいのですか
「判定時刻に、権利行使価格より下にいたら受け取れる」と覚えるほうが正確です。購入したときの値段より下がったかどうかではなく、自分が選んだ権利行使価格との比較で決まります。購入時点ですでに相場が権利行使価格より下にある段を選ぶこともでき、その場合は、その位置を判定時刻まで保てるかどうかが問われます。権利行使価格そのものの意味は権利行使価格とは、判定に使われる価格の決まり方は判定価格とはで確認できます。
判定価格と権利行使価格が同じなら、プットはどうなりますか
条件を満たさず、支払った購入価格が損失になります。表1のとおり、プットの条件は5社とも「未満」で、同じ値はコールの側に入ります。GMOクリック証券の損益の説明でも、円高予測は「判定価格≧権利行使価格の場合、プレミアムが損失となります」とされています。
プットはコールより不利なのですか
同値のときに受け取れないのはプットの側で、等号はコールの側にだけ付いています。ただし、それが実際の損益にどれだけ効くかは、通貨ペアの価格の刻み方や、その回号の購入価格によって変わります。購入価格は条件の満たしやすさを反映して付くため、「プットだから不利」「コールだから有利」と一般化できる数字は、各社の公表資料からは確認できませんでした。
プットとあわせて押さえる用語
プットの定義に出てくる言葉は、それぞれ別の用語として整理しておくと、どの会社の取引ルールも同じように読めます。
- コール:プットの反対側で、判定価格が権利行使価格「以上」のときに受け取れるオプション。コールの意味
- ペイアウト:条件を満たしたときに受け取る決まった額。国内5社は1枚あたり1,000円。ペイアウトとは
- ラダー:権利行使価格が段のように並び、そのうち1本についてコールかプットかを選ぶ取引の型。ラダー取引とは
- 注文画面のPUT:取引画面での選び方と確認の手順。コール・プットの注文時の意味
プットの条件、1枚あたりのペイアウト、同値の扱いは、口座を開く前に各社の公式の取引ルールで確かめられます。掲載した6社はいずれも金融庁の登録を受けた国内の業者で、取引ルールの違いは国内6社の比較で並べています。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- GMOクリック証券「オプション取引とは(外為オプション 予備知識)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- GMOクリック証券「オプションの種類(外為オプション 予備知識)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- GMOクリック証券「損益(外為オプション 予備知識)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- GMOクリック証券「外為オプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- 楽天証券「バイナリーオプション サービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- みんなのオプション「サービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- GMO外貨「オプトレ! 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- IG証券「バイナリーオプション取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月22日
- 金融先物取引業協会「FX取引とは(FFAJの学ぼう!FX)」 自主規制団体 / 確認日 2026年9月22日
- 金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」 公的機関 / 確認日 2026年9月22日