IG証券のバイナリーオプションは、他の国内業者と同じく「一定時間後に価格がどうなっているか」を二者択一で予測する商品です。ただし取引の枠組みが違います。取引概要のページには「当社のバイナリーオプション取引は証拠金取引です」と書かれています(2026年9月8日確認)。
この1行から、購入型の他社と3つの点が入れ替わります。価格が円ではなく0〜100のポイントで提示されること、ペイアウトが1枚1,000円ではなく0.1ロットあたり10,000円であること、そして新規注文で買付だけでなく売付も選べることです。単位と向きが同時に変わるため、他社の感覚のまま画面を見ると、いくら払っていくら受け取るのかを読み違えます。
この記事では、IG証券が公開している取引概要と商品説明のページの表記から、価格の建て方、買付と売付の損益、証拠金と最大損失額の関係、途中決済の扱いを順に確認します。勝ちやすい銘柄や狙い目の時間帯は扱いません。金融庁は「一定時間後のレートをピンポイントで高い確度で予測することは非常に困難です」と注意喚起しています(2026年9月8日確認)。ここで分かるのは、取引の枠組みがどう決められているかだけです。
取引概要に「証拠金取引です」と書かれている
IG証券株式会社は金融商品取引業者(関東財務局長(金商)第255号)で、金融先物取引業協会の会員です。商品名は「バイナリー ラダーオプション」、区分は店頭オプション取引と書かれています。取引の種類そのものはラダーオプションで、権利行使価格を基準に上か下かを予測する形です。取引概要は権利行使価格の決め方を「取引開始直前の原資産価格を基準に上下に一定の価格幅をもって複数の権利行使価格を設定します」と説明しています(2026年9月8日確認)。
違うのは代金の扱いです。国内の他の5社は、オプションの購入代金を支払って権利を買います。IG証券は証拠金取引で、各取引の最大損失額を維持証拠金として管理しますという書き方をしています。権利行使はヨーロピアンタイプで、取引終了時点で自動的に行われます。自分で権利行使の操作をする場面はありません。
原資産はFXだけではありません。取引概要には、FXの通貨ペアに加えて株価指数や商品(コモディティ)が並んでいます。FXで対象になるのは米ドル/円、ポンド/円、ユーロ/円、ユーロ/米ドル、豪ドル/円、ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルです。満期は「ラダーオプション(当日)」と「ラダーオプション(2時間)」の2種類で、注文の受付は取引期間の終了より前に締め切られます。同社の商品ページは「判定時刻の2分前まで取引可能です」と書いていますが、取引概要側では銘柄ごとに注文受付終了の時刻が個別に示されています。実際に買う前に、その銘柄の受付終了時刻を画面で確かめてください。
満期の作り方には業界共通の枠があります。金融先物取引業協会の「取扱ルールの概要」は、個人向け店頭バイナリーオプション取引について「お客様との取引開始から判定時刻までの期間(時間)は、当面の間、2時間以上とします。」「1営業日に設定できる判定時刻の最大数は12回となります。」と定めています(2026年9月8日確認)。IG証券の2種類の満期も、この枠の中にあります。
価格は円ではなく、0から100のポイントで出る
IG証券の説明では「0から100の間で価格が0.1刻みで表示されます」となっています。ここが最初のつまずきどころで、この数字は円ではありません。清算のときに100か0のどちらかになる数値です。取引概要は「取引終了時刻において、判定価格が権利行使価格以上の場合にペイアウトが発生し、当該オプションは取引価格100ポイントで清算されます。」と書いています。
同社の「バイナリーオプションとは」には、60.0で買いポジションを持った場合の例が載っています。条件を満たせば100から60を引いて40の利益、満たさなければ0から60を引いて60の損失です。円に直すときはロットを見ます。ペイアウトは損益通貨が日本円の場合、0.1ロットで10,000円、1ロットで100,000円です。0.1ロットなら100ポイントが10,000円にあたるので、1ポイントは100円という計算になります。40ポイントの利益は4,000円、60ポイントの損失は6,000円です。
ここがペイアウト1,000円の他社ともっとも違う点です。他社は1枚あたりの受取額が1,000円に固定され、購入価格も円で提示されます。IG証券は受取額が0.1ロットで10,000円、価格はポイントです。同社は「最小1,000円程度から取引可能」とも書いていますが、これは価格の低い銘柄を0.1ロットで買った場合の話であり、1回あたりの支払いが1,000円で頭打ちになるという意味ではありません。
国内で唯一、売りから入れる
もう1つの違いは注文の向きです。取引概要は、新規の買付取引(買付ポジションの保有)と新規の売付取引(売付ポジション)が可能で、取引期間中の途中決済もできると書いています。国内の他の5社は買い建てだけで、たとえば外為どっとコムの取引ルールは「新規は買い建てのみ(売り建ての取り扱いなし)」という記載です(2026年8月18日確認)。
同社の説明では、買付は「対象銘柄が目標レート以上に上昇すると予測」する取引、売付は「対象銘柄が目標レート未満に留まると予測」する取引です。同じ60.0でも、買えば損失の上限は支払った60ポイント、売れば損失の上限は100との差である40ポイントになります。価格が高い銘柄ほど、買付は損失側が重くなり、売付は利益側が薄くなります。どちらを選ぶかで、当たったときの取り分と外れたときの負担が逆向きに動きます。
注文の種類には制限があります。取引概要は、バイナリーオプションではリミット注文とストップ注文が利用できないとしています。価格を指定して待つ形の注文は置けません。
購入型の5社と、どこが入れ替わるのか
| 項目 | 購入型の他社(例:GMOクリック証券・外為どっとコム) | IG証券 |
|---|---|---|
| 取引の枠組み | オプションの購入代金を支払って権利を買う | 証拠金取引(最大損失額を維持証拠金として管理) |
| 新規注文の向き | 買い建てのみ(外為どっとコムは「新規は買い建てのみ(売り建ての取り扱いなし)」) | 新規の買付・売付の両方 |
| 価格の単位 | 円(GMOクリック証券は1枚あたり約50円〜999円) | 0から100の間で0.1刻みのポイント |
| ペイアウト | 1枚1,000円の固定(GMOクリック証券) | 0.1ロット10,000円/1ロット100,000円(損益通貨が日本円の場合) |
| 取引単位 | 1枚(GMOクリック証券) | 0.1ロット単位 |
| 注文の種類 | 成行のみ(GMOクリック証券は新規は購入、決済は売却) | リミット注文・ストップ注文は利用できない |
表を縦に見ると、入れ替わっているのは単位と向きで、判定の考え方そのものは共通していることが分かります。どちらも判定価格が権利行使価格以上かどうかで決まり、取引期間の途中で手放すこともできます。
読み替えで間違えやすいのは金額の桁です。他社の感覚のまま「60」を60円だと思って買うと、0.1ロットでは6,000円を払うことになります。逆に、他社で1枚1,000円の受け取りに慣れていると、IG証券で当たったときの受取額も1,000円だと思い込みます。単位が10倍違うという前提で画面を見てください。
証拠金取引なのに、ロスカットの対象にならない
「証拠金取引」と聞くと、ロスカットや追加の証拠金を思い浮かべる人が多いはずです。FXではレバレッジをかけて建玉を持つため、相場が逆に動けば預けた証拠金を超える損失が出ることもあります。バイナリーオプションはこの点が違います。
金融先物取引業協会の取扱ルールは、バイナリーオプションの証拠金を他の取引と区分管理する場合について「バイナリーオプション自体は、証拠金を上回る損失が発生しないことから、ロスカットすることはありません。」としています(2026年9月8日確認)。IG証券が最大損失額をそのまま維持証拠金として管理しているのは、この構造と対応しています。買付なら支払った取引価格、売付なら100との差額が、建てた時点で確定した損失の上限です。
ただし、これを「安全」と読み替えないでください。1回の損失に上限があることと、資金が減らないことは別の話です。外れた回に払った額は戻らず、取引を重ねるほど積み上がります。また、取引概要のページにはロスカットの説明として「口座の残高が一定の割合を下回った際、強制的に予約注文の取り消しおよび保有ポジションの決済が行われる仕組みのことです。」という記述もあります。同じ口座で他の商品も取引している場合、口座全体の状態は別に確認する必要があります。
途中決済とスプレッド
途中売却は取引期間中に行えます。協会のルールも「取引が成立し、お客様が保有するポジションについて、判定時刻の直前まで、ポジションの解消に応じます。」と定めています。損益は差金決済で、取引概要は「ポジション保有時の支払(または受取)プレミアムとポジション清算(決済)時の受取(または支払)プレミアムの差額分をお客さまのお取引口座に反映します。」と説明しています。
価格には買値と売値の両方があります。取引概要は「取引価格は原資産の価格と同様に買付価格と売付価格があり、当該価格の差をスプレッドといいます。スプレッドは提示する価格水準および取引終了までの残存時間により変動する場合があります。」と書いています。買った直後に手放しても同じ価格では売れず、その差はポイントの形で残ります。価格そのものは、原資産価格・ボラティリティ・取引終了までの時間からブラック・ショールズ・モデルで算出されると説明されています。
記載を確認できなかったこと
取引概要のページで、次の項目は記載を確認できませんでした。推測で埋めずに残します。
- 取引手数料の有無と金額。スプレッドについての説明はありますが、手数料そのものの記載は確認できませんでした
- バイナリーオプションで使えるデモ取引の内容。デモ口座の案内へのリンクはありますが、この商品での取り扱いについての説明は確認できませんでした
- 判定価格が権利行使価格を下回った場合の条件。ペイアウトが発生する側(権利行使価格以上)の記載はありますが、それに対応する下側の条件の記載は確認できませんでした
これらはIG証券の業者ページでも「-」のまま置いています。値が無いことと、制度が存在しないことは別です。実際に取引する前に、口座開設後の取引画面と最新の取引概要で確認してください。
口座を選ぶ前に確かめること
IG証券は、単位も注文の向きも他社と違います。他社と横に並べて比べるときは、金額そのものではなく1回あたりの支払いの上限、受け取りの額、注文できる向きの3つで見ると、条件の違いがそろえられます。当サイトの取扱業者の比較は、各社が公表している値と確認日を並べているので、そこから同じ項目を拾ってください。
最後に、金融庁は取引を始める前に、相手が金融商品取引法の登録を受けている業者かどうかを必ず確認するよう求めています。「日本で登録を受けずに日本に居住する者に対して金融商品取引を業として行うことは禁止されています」「無登録業者と取引した場合は、トラブルが生じても無登録業者への追及は極めて困難です」という説明です(2026年9月8日確認)。IG証券は登録番号を公表している国内の登録業者ですが、同じ「バイナリーオプション」という名前で、登録を受けていない業者がSNSなどから勧誘してくることがあります。名前が似ていても別の相手です。登録番号を自分で照会してから口座を開いてください。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- IG証券「バイナリーオプション取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月8日
- IG証券「バイナリーオプションとは」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月8日
- IG証券「バイナリーオプション」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月8日
- 一般社団法人金融先物取引業協会「取扱ルールの概要」 自主規制団体 / 確認日 2026年9月8日
- 金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」 金融庁 / 確認日 2026年9月8日
- GMOクリック証券「外為オプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年8月18日
- GMOクリック証券「外為オプションのはじめかた」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年8月18日
- 外為どっとコム「バイナリーオプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年8月18日