「何時に取引すればいいか」という問いは、2つに割れます。片方には公表資料で答えられ、もう片方には答えられません。
答えられないのは「何時が動きやすいか」のほうです。金融庁、国際決済銀行、国内6社の公表資料を見ましたが、時間帯ごとの値動きの大きさを比べた数値は、どこにも見つかりませんでした。「ロンドン時間は荒れる」「東京時間は動かない」という言い方の裏づけになる公表データを、この記事では提示できません。
答えられるのは、時間帯によって取引の条件そのものが変わる部分です。そもそもその時刻に回号があるのか。年に2回、口座に表示される時刻が1時間ずれるのか。業者が「流動性が下がる」と想定して条件を変えることがある時間帯なのか。この3つは、どれも各社が文字で公表しています。
そこでこの記事は、3つの市場の説明から始めません。日本時間の24時間を1本の軸に置き、国内6社の公表値がその上にどう並ぶかを先に確かめます。取引時間そのものの一覧はバイナリーオプションの取引時間は何時から何時までにあります。
「東京時間」「ロンドン時間」に、公的な定義はない
前提を1つ置きます。東京時間・ロンドン時間・ニューヨーク時間という区切りは、証券取引所の立会時間のように制度で決められたものではありません。外国為替の取引は相対で行われ、市場全体としての開場・閉場の時刻がありません。参照した公的資料の中に、この3つの時間帯の開始と終了を定義した文書は見つかりませんでした。
公表されているのは、取引が地理的にどこへ偏っているかです。国際決済銀行(BIS)が3年ごとに実施している調査によると、2025年4月の店頭外国為替取引高は1日あたり9.6兆ドルで、2022年の7.5兆ドルから28%増えました。仲介したデスクの所在地で分けると、英国が38%で最大、次いで米国が19%、シンガポールが11.8%、香港が7.0%です。この4拠点で全体の75%を占めます(いずれも2026年9月4日確認)。
ここで気をつけたいのは、この数字が「どこで仲介されたか」の分布であって、「何時が動きやすいか」ではないことです。BISの調査は4月の1か月ぶんの取引高を集計したもので、時間帯別の内訳ではありません。英国に38%集まっているという事実から、ロンドンの営業時間に値動きが大きくなる、と直接は言えません。
そこから言えるのは、売買を仲介する部門の多くが英国と米国にあるため、その2か国の営業日と営業時間の影響を受けやすい構造になっている、という程度です。そして後で見るとおり、その「営業時間」のほうが年に2回動きます。値動きの傾向を通貨ペアの側から見る話は通貨ペアの分析にまとめています。
日本時間の1日に、6社の取引時間を並べる
推測を挟まずに確かめられるのは、ここからです。国内6社が公表している取引時間を、日本時間の1本の軸に重ねます。
並べると、「時間帯を選ぶ」という言葉が実際に指すものが変わります。6社すべてが同時に開いているのは、日本時間の9:20から翌4:20までの19時間です。そこを外れる時間帯でも、翌5:25〜7:10はIG証券が銘柄を出しているため、まったく選べない時間はありません。時間帯の選択は「開いているか」の問題ではなく、そのときどの会社のどの回号が選べるかの問題です。
そのうえで、同じ時刻に開いていても、回号の刻み方は会社ごとに違います。
| 会社(サービス名) | 取引時間(日本時間) | 回号の数と1回号の長さ | 判定・満期の刻み |
|---|---|---|---|
| GMOクリック証券(外為オプション) | 月〜金 8:00〜翌5:00 | 10回号・1回号3時間(2時間おきに次回号が開始) | 正時(第1回号は8:00〜11:00) |
| 楽天証券(らくオプ) | 月〜金 9:20〜翌5:20(標準時間) | 10回号・1回号2時間 | 毎時20分(第1回は判定11:20) |
| みんなのオプション | 月曜7:10〜土曜4:10 | 10回号・1回号3時間(2時間おきに次回号が開始) | 毎時10分(第1回は判定10:10) |
| 外為どっとコム(外貨ネクストバイナリー) | 月〜金 8:20〜翌4:20 | 10回号・1回号2時間(取引可能1時間58分+判定期間2分) | 毎時20分(第1回号は判定10:20) |
| GMO外貨(オプトレ!) | 毎営業日 7:25〜翌5:25 | 11回・1回号2時間(取引可能1時間59分+判定期間60秒) | 参照したページでは回号表を確認できませんでした |
| IG証券 | 2時間ラダーは1:00開始の回から23:00開始の回まで | 12本・1回号2時間 | 正時(3:00・5:00など) |
判定の刻みが正時・10分・20分に分かれているため、「21時の相場を見て取引する」と決めても、実際に答えが出る時刻は口座ごとに違います。回号という単位そのものは回号とは、判定の時刻については判定時刻とはで扱っています。
1回号の長さも2時間と3時間に割れています。3時間の会社は2時間おきに次の回号を始めるため、常に2つの回号が重なって進みます。同じ「今の相場」を見ていても、選べる残り時間が1時間なのか3時間近いのかで、条件はまったく違います。
年に2回、口座の時計のほうが1時間ずれる
時間帯を考えるうえで、いちばん見落とされやすいのがこれです。日本の時計は動かないのに、口座に表示される時刻のほうが動きます。
米国の夏時間は、NISTの説明では3月第2日曜の午前2時に始まり、11月第1日曜の午前2時に終わります。外為どっとコムも取引時間のページで「冬時間(米国標準時間):11月第1日曜日〜3月第2日曜日」「夏時間(米国サマータイム):3月第2日曜日〜11月第1日曜日」と書いています(いずれも2026年9月4日確認)。
問題は、これに合わせて何が動き、何が動かないかが会社ごとに違うことです。
楽天証券は「米国サマータイム期間は1時間繰り上がります」と明記し、標準時間用とサマータイム用の回号表を別々に掲載しています。標準時間の第7回は21:20〜23:18で判定23:20、サマータイムの第7回は20:20〜22:18で判定22:20です。IG証券は表の中に括弧で夏時間の時刻を併記しています。
一方、外為どっとコムの取引時間は冬時間・夏時間とも午前8時20分〜翌午前4時20分で、同じページに両方の表を出したうえで、値が一致しています。動くのは振替可能時間のほうで、火曜〜金曜の上限が翌6時44分から翌5時44分へ繰り上がります。みんなのオプションも、取引時間と回号表には夏時間の別表が無く、日次メンテナンスだけが火曜〜金曜の6:50〜7:10から5:50〜6:10へ動きます。
この違いは、「毎晩21時台に取引する」という決め方に直接効きます。楽天証券の標準時間の回号表では、21:20に第7回が始まります。ところがサマータイムの回号表は8:20・10:20と2時間おきに並ぶため、21時台に始まる回号そのものが無くなります。21時台に画面を開いても、そこで動いているのは20:20に始まった回号の後半です。他社なら回号は動かず、朝のメンテナンス時刻だけが1時間前に来ます。
業者自身が「流動性が下がる回号」を想定している
時間帯による違いを、業者の側がどう扱っているか。ここには公表された記載があります。
外為どっとコムは権利行使価格の設定方法について、「権利行使価格は、回号開始直後に極端に高倍率なラダー構成とならないよう設定しますが、重要な経済指標の発表時間にある回号や、インターバンク市場の流動性が下がる回号等においては、その限りではありません」と書いています。
楽天証券も「重要な経済指標や外国為替市場の流動性低下等の理由により、回号毎に権利行使価格の設定数や間隔が変わる場合があります」とし、さらに「クリスマスや年末年始等、外国為替市場の流動性の低下が予想される時期や重要経済指標の発表等が予定されている場合には、回号の開催回数を変更する場合があります」と記載しています(いずれも2026年9月4日確認)。
読み取れるのは2つです。1つは、業者が「流動性が下がる回号」の存在を前提にして条件を組んでいること。もう1つは、そのときに変わるのが値動きの予想ではなく、選べる権利行使価格の本数と間隔、場合によっては回号の有無そのものだということです。
これは読者にとって具体的な確認事項になります。深夜や早朝の回号を選ぶなら、いつもと同じ本数のラダーが並んでいるかを画面で見る。年末年始やクリスマスの週なら、回号が開かれているかを先に確かめる。休場や祝日の扱いは取引できない日にまとめています。権利行使価格の決まり方そのものは権利行使価格とはで扱っています。
発表の予定は、どこかの市場の朝に置かれている
「重要な経済指標の発表時間にある回号」と書かれている以上、その時刻は調べられます。
米国労働省労働統計局(BLS)は、雇用統計(Employment Situation)の公表日程を事前に掲載しており、公表時刻はいずれも午前8時30分(米国東部時間)です。2026年9月4日、10月2日、11月6日、12月4日と、月に1回のペースで並んでいます(2026年9月4日確認)。
この時刻が日本時間の何時にあたるかは、参照した公的資料の中に明記されたものを見つけられませんでした。ただし、確かなことが1つあります。米国東部時間で固定されている以上、日本時間に置き直した発表時刻は、夏時間の切り替わりで1時間動きます。前の節で見た楽天証券やIG証券の回号表が動くのと、同じ向き・同じ幅です。
つまり、日本時間で「毎月◯日の◯時」と覚えると、年に2回ずれます。安全なのは、使っている口座の回号表と、経済指標カレンダーの両方を、同じ夏時間・標準時間の前提で読むことです。発表の前後に取引条件がどう変わるかは経済指標の発表前後にまとめています。
IG証券が「週初における銘柄設定の基準時間は、ニューヨーク時間午後6時です」と書いているのも、同じ構造です。週の切れ目そのものが、日本の暦ではなく米国東部の時計で決められています。
生活時間に合わない時間帯を選ぶと、増えるのは回数だけ
最後に、時間帯を「自分の側」から決める話をします。
金融庁は注意喚起の中で、バイナリーオプションについて「短時間で損益結果が判明するために、安易に何度も取引を行ってしまうおそれがあります。そして、短期間に繰り返し取引した結果、多額の損失を被るおそれがあります」と書いています(2026年9月4日確認)。1回あたりの損失は購入価格までですが、回数が増えれば減る金額は積み上がります(投資リスクについて)。
この点で、時間帯の選び方には具体的な意味があります。表1のとおり、回号は2時間おきに始まります。起きている時間が長いほど、その日に選べる回号の数は増えます。深夜に起きていれば、判定を待つ間にもう1つ、その次にもう1つと、選択肢が並び続けます。
判断の質が落ちる時間帯に、選択肢だけが増える。これは有利な条件ではありません。回号の数は各社10〜12なので、たとえば「21時台に始まる回号を1つだけ」と先に決めれば、その日の上限は1になります。時間帯を決めるというのは、どこが動くかを当てにいくことではなく、自分が何回まで注文できる状態に身を置くかを決めることでもあります。1日あたりの回数の考え方は1日に何回取引できるかにあります。
時間帯についてよく言われることを、公表資料で確かめる
「東京時間は動かない」と言われますが本当ですか
参照した資料の中に、時間帯ごとの値動きの大きさを比べた数値は見つかりませんでした。確認できたのは、取引を仲介するデスクのシェアが英国38%・米国19%で、この2か国に偏っているという地理的な分布だけです(BIS、2026年9月4日確認)。これは時間帯別の統計ではないため、東京の営業時間に動きが小さいことの根拠にはなりません。
深夜のほうが有利ですか
有利・不利を示す公表データはありません。分かっているのは、外為どっとコムが「インターバンク市場の流動性が下がる回号」ではラダーの構成が変わりうると書いていること、楽天証券が流動性低下時に回号の開催回数を変える場合があると書いていることです。深夜の回号を選ぶ場合は、権利行使価格の本数と間隔がいつもと同じかを画面で確かめるのが、公表資料から導ける確認方法です。
サマータイムは自分で時計を直す必要がありますか
日本の時計は変わりません。変わるのは業者が表示する時刻のほうです。楽天証券は標準時間とサマータイムの回号表を別々に公表し、IG証券は括弧で併記しています。外為どっとコムとみんなのオプションは、取引時間そのものは変わらず、振替可能時間や日次メンテナンスの時刻が1時間動きます。GMOクリック証券とGMO外貨については、参照したページの範囲で夏時間の記載を確認できませんでした。
何分足のチャートを見るかは、時間帯で変えるべきですか
そう判断できる公表資料は見つかりませんでした。関係があるのは足種ではなく、選んだ回号の残り時間のほうです。1回号は2時間または3時間で、注文の受付は判定・満期の1〜2分前に終わります。足種の選び方そのものはチャートの時間軸で扱っています。
週明けと週末で時間帯の扱いは変わりますか
変わります。みんなのオプションは月曜7:10に始まり土曜4:10に終わります。IG証券は「月曜日などの休日後最初の営業日においては午前9時(午前8時)取引開始の銘柄から提供を開始」「金曜日などの休日前営業日においては、翌日午前3時(午前2時)取引開始の銘柄がその週の最後の設定銘柄」としています。週末の扱いは土日は取引できるかにまとめています。
決める前に、自分の口座の時計を書き写す
この記事で確かめられたことを並べ直します。時間帯ごとの値動きの傾向を示す公表データは、見つかりませんでした。取引を仲介するデスクは英国と米国に偏っていますが、それは地理の分布であって時刻の分布ではありません。
一方で、時間帯によって確実に変わるものが3つありました。その時刻に回号があるかどうか。判定が正時に来るのか10分・20分に来るのか。米国の夏時間で、口座のどの時刻が1時間ずれるのか。いずれも各社が文字で公表していて、読めば分かります。
だとすれば、注文の前に用意しておくのは相場の予想ではなく、自分の口座の時刻表です。取引時間の始まりと終わり、回号の開始と判定の時刻、注文受付が止まる時刻、メンテナンスの時刻、そしてそのうちどれが夏時間で動くか。この5つを1枚に書き写せば、「何時に取引するか」は自分で決められる問いになります。各社の公表値は国内登録業者の比較にも並べています。
書き写せない項目が残ったときは、埋めずに空けておいてください。この記事でも、GMO外貨の回号表と、GMOクリック証券・GMO外貨の夏時間の扱いは、参照したページの範囲で確認できないまま残っています。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- GMOクリック証券「外為オプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- 楽天証券「バイナリーオプション サービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- みんなのオプション「みんなのオプションのサービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー 取引時間」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- 外為どっとコム「バイナリーオプション(外貨ネクストバイナリー)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- GMO外貨「オプトレ! 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- IG証券「バイナリーオプション取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月4日
- BIS「Triennial Central Bank Survey:OTC foreign exchange turnover in April 2025」 統計 / 確認日 2026年9月4日
- BIS プレスリリース「OTC foreign exchange turnover in April 2025」 統計 / 確認日 2026年9月4日
- U.S. Bureau of Labor Statistics「Employment Situation」公表日程 公的機関 / 確認日 2026年9月4日
- NIST「Daylight Saving Time (DST)」 公的機関 / 確認日 2026年9月4日
- 金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」 金融庁 / 確認日 2026年9月4日