判定価格とは、判定時刻に権利行使価格と比べて、ペイアウトが出るかどうかを決めるための原資産の価格です。IG証券は取引概要で、判定価格を「権利行使価格と照合し、ペイアウトの条件を満たしているかを判断するために用いる原資産の価格」と定義しています。
ただし、用語としての意味が同じでも、どのレートを使うのか、どの瞬間の値を取るのか、取れなかったときにどうするのかは、各社の規程が別々に決めています。国内でバイナリーオプションを扱う6社の取引ルール・サービス概要を読み比べると、判定時刻に自社の価格が取れない場面では、別の配信元の価格を使う会社、少し前の自社価格まで遡る会社、購入金額を返すとしている会社に分かれました(2026年9月18日確認)。判定に使う桁の丸め方も、四捨五入と切り捨ての両方があります。
この記事では、判定価格を「規程に出てくる用語」として読み解きます。取引画面のチャートと判定の数字がずれる理由(売値と中間値の違い)は判定価格とチャートの違いで説明しているので、ここでは6社の定義の書き方、時点の決め方、取れないときの手順、桁と丸め、権利行使価格との関係に絞ります。
6社は判定価格をこう書いている
まず、各社の公式ページで判定価格(会社によっては「判定レート」)がどう書かれているかと、そのもとになる原資産価格が何から作られているかを並べます。文言は公式ページの表記のままです。
| 会社(サービス) | 判定価格・判定レートの書き方 | もとになる原資産価格 |
|---|---|---|
| GMOクリック証券(外為オプション) | 判定レート:「満期時間前に最後に更新された原資産価格(FXネオレート)の中間値(MIDレート)」 | 「当社FXネオ取引で提示しているレートと同様の方法で生成した、各通貨ペアのBIDレートとASKレートの中間値(MIDレート)」 |
| 楽天証券(らくオプ) | 「判定時刻における原資産価格。」 | 「複数のカバー取引先から配信されたBIDレートとASKレートの中間値(MIDレート)を採用しています。」 |
| みんなのオプション | - (判定価格だけを定義した文はサービス概要で確認できず。ペイアウトの条件で「判定価格≧権利行使価格」と使用) | 「複数のカバー取引先から配信されたアスク価格とビッド価格の中間レート」 |
| GMO外貨(オプトレ!) | - (独立した定義文は確認できず。判定方法を「判定時間の原資産の価格と権利行使価格を比較します」と説明) | 「当社店頭外国為替証拠金取引外貨ex口座のレート(MID:仲値)を参照します」 |
| 外為どっとコム(外貨ネクストバイナリー) | 「判定時刻前に外貨ネクストネオにて生成され、かつ判定時刻前後に取得された原資産価格」 | 「『外貨ネクストネオ』のBIDとASKの中間値(MID。以下、『仲値』)を採用」 |
| IG証券 | 「権利行使価格と照合し、ペイアウトの条件を満たしているかを判断するために用いる原資産の価格」 | FXが原資産の場合「IG証券の提示価格(中値)を参照します」 |
表1から読み取れる共通点は、6社とも買値と売値の中間の値を使っていることです。呼び方は「MIDレート」「中間レート」「仲値」「中値」と違いますが、指しているものは同じ種類の値です。
違いは2つあります。1つ目は中間値のもとになる価格の出どころです。楽天証券とみんなのオプションは「複数のカバー取引先から配信された」価格を使い、GMOクリック証券・GMO外貨・外為どっとコム・IG証券の4社は、自社のFX取引(FXネオ、外貨ex、外貨ネクストネオ)や自社の提示価格を参照すると書いています。つまり同じ時刻の米ドル/円でも、会社が違えば判定価格の数字は一致するとは限りません。
2つ目は定義文そのものに時点が書かれているかどうかです。楽天証券は「判定時刻における」、GMOクリック証券は「満期時間前に最後に更新された」、外為どっとコムは「判定時刻前に…生成され、かつ判定時刻前後に取得された」と、それぞれ時点の決め方が違います。次の節で、この違いを時間の流れの上に置いて見ます。
なお、GMOクリック証券とGMO外貨が使う「判定レート」は、他社の「判定価格」と同じものを指す言葉です。規程を検索するときは、両方の語で探すと見落としが減ります。
「判定時刻の価格」はどの瞬間の値か
為替レートは連続した線ではなく、配信のたびに更新される点の並びです。判定時刻の「ちょうど」に新しい値が届くとは限りません。そのため各社は、判定時刻のどの値を判定価格にするのかを規程で決めています。
図1の4社を、時点の決め方で整理すると次のようになります。
- GMOクリック証券:満期時間の前に最後に更新されたFXネオレートの中間値。判定時刻より後に届いた値は使わない、という書き方です
- 楽天証券:「判定時刻における原資産価格」。時刻そのものを基準にしています
- GMO外貨:2時間の取引期間を「取引可能期間:1時間59分」と「判定期間:60秒」に分けています。判定時刻ちょうどに価格情報が得られない場合は「判定直前の価格を判定レートとします」とし、その直前の価格は「1分程度前まで遡って参照します」と書いています
- 外為どっとコム:判定時刻前に生成され、かつ判定時刻前後に取得された値。価格が作られた時刻と、システムがそれを受け取った時刻を分けて書いているのが特徴です
図に入れなかった2社も確認しておきます。みんなのオプションは、回号ごとの「判定時間」(第1回は10:10)を表で示していますが、その時刻のどの値を使うかを定めた文はサービス概要で確認できませんでした。IG証券は「取引終了時点で自動的に権利行使が行われます」と書き、取引終了時刻の判定価格で判断するとしています。
読者にとっての意味は、判定時刻の直前に画面で見ていた最後の数字が、判定に使われた数字と同じとは限らないということです。どの値が使われるかは、ここに挙げた各社の定義に従って決まります。判定時刻そのものと注文締切の関係は判定時刻と購入締切の違いで扱っています。
判定時刻に価格が取れなかったら
配信の途絶やシステムの障害で、判定時刻に自社の価格が取れないことがあります。この場面の扱いは、6社の規程でもっとも差が大きい部分です。
別の配信元の価格を使う:GMOクリック証券・IG証券
GMOクリック証券は、「何らかの理由により、回号終了時に当社がFXネオのレートを取得できなかった場合には、Bloomberg社が同時点で配信するレート(BIDレートとASKレートの中間値)を判定レート」とすると定めています。自社の価格が無くても、同じ時点の外部の中間値で判定が行われるという扱いです。
IG証券は、FXが原資産のバイナリーオプションについて「予期せぬ事象により当該価格の配信が行われなかった場合、ブルームバーグ社またはロイター社が発表する価格を参照します」としています。株価指数や商品が原資産の銘柄では逆に、ブルームバーグ社の価格を基本にし、配信が無い場合に「ロイター社が発表する価格またはIG証券の提示価格(中値)を参照します」と書いています。原資産の種類によって、どれが基本でどれが代替かが入れ替わる点に注意が要ります。
直前の自社価格へ遡る:GMO外貨・外為どっとコム
外為どっとコムの手順は段階的です。まず「判定時刻直前における『外貨ネクストネオ』の該当通貨ペアの直前の取引レートのBIDとASKの中間値(仲値)を適用します」。それでも価格情報が得られない場合は「判定時刻より遡って2分以内に外貨ネクストネオから取得し生成された判定時刻直前の価格を適用します」。さらに「2分を超えて価格情報が得られていない場合は、回号中止等の判断を行う場合があります」としています。遡れるのは2分までで、それを超えると判定そのものが行われない可能性がある、という書き方です。
GMO外貨は、先に見たとおり1分程度前まで遡って直前の価格を使います。そのうえで、システム障害などで「取引が継続できないと判断した場合は、マニュアルにて取引停止(売却含む)および、状況に応じて、強制払戻し(購入金額の返金)を実行します」とも定めています。一時的に価格が欠けたときは遡り、取引そのものを続けられないときは払戻しと、場面で書き分けているので、図2では2つの列に入れました。
購入金額を返す:楽天証券
楽天証券は、「判定時刻において、当社にて判定価格が取得できずお客様が権利行使を行うことができない場合は、原則として、当該回号中にお客様が支払ったオプション購入金額をご返金いたします」としています。この場合は判定そのものが行われないため、ペイアウトを受け取るか購入金額を失うかのどちらかではなく、支払った購入金額が戻る扱いになります。「原則として」と書かれているとおり、例外の余地は規程に残されています。
記載を確認できなかった:みんなのオプション
みんなのオプションのサービス概要では、判定時刻に価格が取れなかったときの代替の手順を確認できませんでした。確認できたのは、回号を作る前の段階の規定で、「商品生成時間より前の10分間に原資産価格が配信されなかった場合、該当する回号の取引は停止されます」というものです。これは判定ではなく、回号を始めるかどうかの話です。判定時の扱いを知りたい場合は、同社の契約締結前交付書面や取引約款で確かめる必要があります。
どの扱いが読者にとって有利かは、この比較からは言えません。外部の価格で判定されれば結果は出ますが、それは普段見ている自社の価格ではありません。返金なら損益は動きませんが、当たっていたかもしれない回号のペイアウトも出ません。大事なのは、口座を持つ会社がどれを採っているかを、取引を始める前に知っておくことです。
判定に使う桁と丸め方
判定価格と権利行使価格は、決められた桁で比べられます。中間値は買値と売値を足して2で割るため、表示の桁より細かい端数が出ることがあり、それをどう処理するかも規程に書かれています。
| 会社 | 対象 | 桁と丸め方の記載 |
|---|---|---|
| みんなのオプション | 原資産価格 | 決済通貨が「日本円」の場合は小数点第4位を、「外国通貨」の場合は小数点第6位を四捨五入 |
| GMO外貨 | 権利行使の判定に使用する桁数 | 対円の5通貨ペアは小数第3位(小数第4位以下切り捨て)、対米ドルの3通貨ペアは小数第5位(小数第6位以下切り捨て)まで表示 |
| IG証券 | 判定価格の中値(FX) | 中値の計算において1pip相当値の1/100単位の数値が発生した場合には当該数値を四捨五入 |
| 外為どっとコム | 原資産価格の表示 | EUR/USD以外は小数第4位以下を切り捨て、小数第3位まで表示。EUR/USDは小数第6位以下を切り捨て、小数第5位まで表示 |
| GMOクリック証券 | 基準となる権利行使価格 | 注文受付開始1分前の為替レートを、対円通貨ペアは小数第二位、対ドル通貨ペアは小数第四位で四捨五入(判定レートの丸め方は確認できず) |
| 楽天証券 | - | - (判定価格の桁と丸め方の記載をサービス概要で確認できず) |
表2でいちばん注意したいのは、同じ桁数でも、四捨五入と切り捨てでは判定の結果が変わることがある点です。みんなのオプションは原資産価格を四捨五入で、GMO外貨は判定に使う桁を切り捨てで作ると書いています。
図3は、2社の丸め方の規定だけを取り出し、同じ仮定の中間値に当てはめたものです。中間値が149.9995円のとき、小数点第4位を四捨五入すると150.000円になり、権利行使価格150.000円と同じ値になります。コールの条件は「以上」なので、コールの側が条件を満たします。同じ値を小数第4位以下で切り捨てると149.999円で、権利行使価格を下回り、プットの側が条件を満たします。
実際には、2社は中間値のもとになる価格の出どころも違うため、同じ時刻に同じ中間値が出るわけではありません。それでも、権利行使価格のすぐ近くで判定を迎えたときは、丸め方の規定まで読まないと結果を説明できないことは分かります。判定価格と権利行使価格が同じ値になったときの扱いは判定価格と権利行使価格が同じになったときで詳しく説明しています。
権利行使価格とは「いつの原資産価格か」が違う
判定価格と取り違えやすいのが権利行使価格です。どちらも同じ原資産価格から作られますが、使う時点がまったく違います。権利行使価格は回号が始まる前に、判定価格は回号が終わるときに決まります。
6社の規程では、権利行使価格の基準になる時点が次のように書かれています。
- 楽天証券:「各回号の取引開始1分前の原資産価格を基準とし、上下均等に7本の権利行使価格を設定します」
- みんなのオプション:「各回号の取引開始1分前に配信されている原資産価格をもとに」、上限と下限を定め「計8本を設定します」
- 外為どっとコム:「取引可能時間の開始時刻1分前時点の原資産価格を基準とし、過去のボラティリティを用いて上下対称かつそれぞれの間隔が均等になるよう設定します」
- GMO外貨:「購入受付開始1分前の原資産価格、およびヒストリカルボラティリティを用いて」設定
- GMOクリック証券:基準となる権利行使価格は「各回号の注文受付が開始される1分前の為替レート」から決定
- IG証券:「取引開始直前の原資産価格を基準に上下に一定の価格幅をもって複数の権利行使価格を設定します」
5社が「開始1分前」、IG証券が「開始直前」です。つまり権利行使価格は回号の最初に会社が決めて並べ、読者はその中から選ぶ数字で、判定価格は回号の最後に規程どおりに決まり、誰も選べない数字です。バイナリーオプションの損益は、この2つの時点の原資産価格の関係だけで決まります。権利行使価格そのものの意味と選び方は権利行使価格とはにまとめています。
規程を読むときに気をつけたいこと
ここまでの内容を、口座の規程を読むときの確認点にまとめます。
- 判定価格(判定レート)の定義文:中間値のもとが自社のFXか、カバー取引先か
- 時点の書き方:「判定時刻における」か、「最後に更新された」か、「前に生成され前後に取得された」か
- 取れなかったときの手順:外部の配信元、遡り、返金のどれか。遡る場合は何分までか
- 桁と丸め方:判定に使う桁で四捨五入か、切り捨てか
これらは各社の取引ルールの一部で、変更されることがあります。この記事の文言は2026年9月18日に確認したもので、取引の前には公式ページの最新の記載を確かめてください。6社の取引条件は国内6社の比較で並べています。
掲載した6社は、いずれも金融庁の登録を受けた国内の業者です。国内の登録業者かどうかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」の金融商品取引業者の一覧で調べられます。判定価格の決め方を規程で確認できない業者では、出た結果を規程と照らし合わせる手がかりがありません。
最後に、判定価格の仕組みを知っても、勝ちやすくなるわけではありません。判定の直前には注文を受け付けない時間があり、境目のすぐ近くで終わるかどうかを事前に知る方法もありません。オプションを購入する取引では、1回で失う額は購入金額までに限られますが、取引を繰り返せばその損失は積み重なります(IG証券の売付取引は、損失の上限の決まり方が異なります)。1回の損失に上限があることの意味と限界は損失が限定される意味で扱っています。同じ用語集のコールとはでは、判定価格と権利行使価格の比べ方が6社でどう書かれているかを整理しています。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- GMOクリック証券「外為オプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月18日
- 楽天証券「らくオプ サービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月18日
- みんなのオプション「サービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月18日
- GMO外貨「オプトレ! 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月18日
- 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月18日
- IG証券「バイナリーオプション取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月18日
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」 金融庁 / 確認日 2026年9月18日