経費

バイナリーオプションの経費|国税庁の記載で確かめる必要経費の範囲

先物取引に係る雑所得等の金額は、総収入金額から必要経費を引いて計算します。国税庁が示す必要経費の定義、家事と兼用の支出を区分する条件、必要経費にならないものとして挙げられている5項目を、品目の一覧を作らずに整理します。

バイナリーオプションの利益にかかる税金を考えるとき、費用を引く場所そのものは決まっています。国内の登録業者との取引で出た損益は、国税庁の条件を満たせば「先物取引に係る雑所得等」として他の所得と区分して計算しますが、その金額は受け取った額そのままではありません。国税庁は雑所得の金額を総収入金額から必要経費を差し引く形で示していて、取引のために支払った費用は、この必要経費の側に入ります。

混乱しやすいのはその先です。国税庁は、バイナリーオプションについて「パソコン代は経費になる」「書籍は何割まで認められる」といった品目ごとの一覧を公表していません。公表資料から確認できるのは、必要経費そのものの一般的な定義、家事と兼用になっている支出をどう扱うかという条件、そして必要経費にならないものとして名前が挙がっている項目の3つだけです。品目の一覧を探すのではなく、この3つを自分の支出に当てはめる順番になります。

この記事は、国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例に書かれている範囲だけを並べ、どこまでが公表されていてどこからが個別判断なのかをはっきりさせます。当サイトは税理士事務所ではなく、個別の税務判断は行いません。ある支出が経費として認められるかどうかの最終的な判断は、所轄税務署または税理士に確認してください。利益がどの枠に入るのかと税率の内訳はバイナリーオプションの税金、法人名義や個人事業主の場合に変わる点は法人・個人事業主のバイナリーオプションに分けて書いています。

費用を引く位置は「総収入金額」の直後にある

先物取引に係る雑所得等の金額を、総収入金額から必要経費を引いて求める流れを3つの箱で示した図。左の箱は総収入金額で、差金等決済で確定したその年の利益の合計であり、各社が出す年間損益報告書や証明書で確認する、1回ごとではなく年単位と書かれている。中央の箱は必要経費で、総収入金額を得るために直接要した費用、その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用が挙げられ、定義は国税庁No.2210と注記されている。右の箱は先物取引に係る雑所得等の金額で、他の所得と区分して計算し、所得税15パーセントと地方税5パーセント、先物取引に係る雑所得等以外の所得との損益通算はできない、損失は翌年以後3年間繰り越せると書かれている。下の帯には申告するときに添付するものとして、確定申告をする場合は先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を添付しなければならないこと、損失を繰り越す年は申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)も添付しその後も連続して提出することが並んでいる
図1:費用は年単位の総収入金額から引きます税率と添付書類は国税庁「No.1522」「No.1523」、必要経費の定義は「No.2210」、総収入金額から必要経費を引く形は「No.1500」の記載(いずれも2026年10月8日確認)。3つの箱に分けた並べ方は当サイトの整理です

まず計算の形を確認します。国税庁No.1500は雑所得を3つに区分して示していて、公的年金等以外のものについては、業務に係るものもその他のものも「総収入金額-必要経費」という形で金額を求めると書いています。バイナリーオプションの損益は「先物取引に係る雑所得等」という区分で扱いますが、収入から費用を引くという計算の骨格は変わりません。利益が出た年に納める税金は、入ってきた金額ではなく、差し引いたあとの金額をもとに決まります。

その差し引いたあとの金額に、どの税率がかかるのかもあわせて見ておきます。国税庁No.1522は、一定の先物取引の差金等決済をした場合に「所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率による申告分離課税となります」と書いています。同じページには、確定申告をする場合には確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付しなければならないという記載もあります。つまり、費用を差し引いた経過を示す書類が、申告のときに必要になるということです。

損失側の扱いも同じページに書かれています。先物取引に係る雑所得等の計算上生じた損失は、他の「先物取引に係る雑所得等」との損益の通算はできますが、それ以外の所得の金額との損益通算はできません。引ききれない損失は一定の要件の下で翌年以後3年間繰り越せますが、国税庁No.1523によれば、損失が生じた年分について「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」と計算明細書を添付した確定申告書を提出し、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出することが条件です。費用を入れた結果として赤字になった年も、申告しておかないと繰越の枠を使えません。

では、その必要経費はどう決まるのか。国税庁No.2210は、事業所得・不動産所得・雑所得について、必要経費に算入できる金額を次の2つで説明しています。

必要経費に算入できる金額 国税庁No.2210の記載
収入に直接ひもづく費用 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
その年に生じた業務上の費用 その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

この2つの書き方の違いが、判断のときに効いてきます。前者は「その総収入金額を得るために直接要した」という条件が付いていて、収入との結びつきを説明できることが前提です。後者は「業務上の費用」という広い言い方ですが、裏を返せば業務と関係があると言えなければ入らないということでもあります。取引と無関係な支出を、年末にまとめて足し込めるという話ではありません。

国税庁が「経費になる」と答えている例は、投資顧問の年会費と成功報酬

品目の一覧は公表されていませんが、個別の事例への回答はあります。国税庁の質疑応答事例に「投資顧問会社に支払う年会費及び成功報酬」という事例があり、先物取引に関する判断のために投資顧問契約を結び、先物取引に限定した助言を受けて年会費を支払い、その助言に基づく取引で利益が出たときに利益へ一定の率を乗じた成功報酬を支払う、という前提が置かれています。これについて、年会費および成功報酬は先物取引に係る雑所得等の計算上、必要経費に算入することができるという回答が示されています。

ここで見ておきたいのは、金額の大小ではなく前提の置き方です。この事例は「先物取引に限定した助言」という条件のもとで組まれていて、その支出が何のためのものか切り分けられている状態が出発点になっています。契約の中身が複数の目的にまたがっているときに同じ結論になるのかどうかは、この事例からは読み取れません。似たサービスにお金を払っているからといって、そのまま当てはめられるとは限らないということです。

透明性のために、この事例の扱いについて1つ書いておきます。当サイトの取得環境では、国税庁のこのページを文字化けさせずに読み出すことができませんでした。そのため上の説明は引用符を付けた原文の転記ではなく、内容の要約です。照会要旨と回答要旨の正確な文言は、この記事の出典一覧にあるURLを開いて直接確かめてください。読めなかったものを読めたことにしないほうが、あとで判断を誤らずに済みます。

家事と兼用の支出は、区分できる金額だけ

その支出は取引の利益を得るために要した費用かという問いから、左右2つの検討へ分かれる分岐図。左側は家事上と業務上の両方にかかわる支出で、国税庁はこれを家事関連費と呼んでおり、必要経費になるのは取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額だけで、区分を示せない支出は必要経費に入らない、分かれ目は金額の大小ではなく業務ぶんを記録で切り出せるかどうかと書かれている。右側は必要経費にならないものとして挙げられている項目で、1が生計を一にする親族への地代家賃など、2が生計を一にする親族への給与賃金で青色事業専従者給与を除く、3が所得税や住民税、4が罰金、科料および過料、5が公務員に対する賄賂など、これは事業所得・不動産所得・雑所得についての記載と注記されている。下の帯には、国税庁はこの取引で何が経費になるかを品目では列挙しておらず、確認できたのは一般的な定義と、先物取引に限定した投資顧問契約の年会費・成功報酬を必要経費に算入できるとした質疑応答事例であることが書かれている
図2:分かれ目は「明らかに区分できるか」です家事関連費の条件と除外項目の文言は国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」の記載(2026年10月8日確認)。投資顧問の事例は国税庁 質疑応答事例で、当サイトは原文を文字化けせずに読み出せなかったため転記していません。左右に分けた並べ方は当サイトの整理です

実際に迷うのは、取引だけに使っているとは言い切れない支出です。自宅の一部で取引している場合の電気代や通信費、ふだんも使っているパソコン、取引以外の内容も載っている書籍などが当てはまります。国税庁No.2210は、こうした支出を家事関連費と呼び、次のように書いています。個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用となるものがあり、この家事関連費のうち必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」。

条件は2つに分かれています。取引の記録などに基づくことと、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できることです。どちらも、支出の性質そのものより、説明できる状態になっているかを問うています。同じ通信費でも、業務ぶんをどう切り出したのかを示せる人と示せない人で結論が変わりうる、という構造です。一方で、何割なら認められるという数字は国税庁のこのページに書かれていません。割合の目安を探しても、公表資料の中には見つかりません。

必要経費にならないものについては、国税庁No.2210が項目を挙げています。こちらは品目として読める形になっているので、先に目を通しておくと無駄な検討を減らせます。

必要経費にならないものとして挙げられている項目 補足として書かれていること
生計を一にする親族への地代家賃など -
生計を一にする親族への給与賃金 青色事業専従者給与を除く
所得税や住民税 -
罰金、科料および過料 -
公務員に対する賄賂など -

表の「-」は、国税庁のページにその項目について追加の条件が書かれていなかったという意味です。反対に、同じページは事業税は全額必要経費になるとし、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になると書いています。税金のうち何が入るかは項目ごとに違うということです。なお、このページは事業所得・不動産所得・雑所得を対象にしたものであり、読者それぞれの状況にどの項目がどう当てはまるかを当サイトでは判断できません。個別の事実関係に当てはめる作業は、税務署や税理士の領域です。

業者が出す書類に載るのは、取引そのものの損益だけ

業者が出す書類に載っているものと、書類に載らず自分で記録するものを左右に並べた比較図。左側はGMOクリック証券が年間損益報告書を毎年年初に発行すると記載していること、楽天証券が期間損益報告書を交付しそこに課税対象となるバイナリーオプション取引における損益金合計額の証明書が表示されること、証明書の購入金額・受取金額・その他の合計を年間利益として記入すること、どちらも取引そのものの損益であることが書かれている。右側は取引のために自分が支払った費用、いつ・何に・いくら払ったかの記録、家事と兼用の支出について業務ぶんを区分した根拠が並び、業者の書類は取引損益の証明であって読者が個別に払った費用は入っておらず、入れるかどうかの判断と記録は読者の側にあると書かれている。下には3つの数値カードがあり、5社が取引手数料を無料または0円と公表、1社が取引概要に手数料の記載を確認できず、6社が当サイトが条件を記録している業者の母数となっている
図3:費用の記録は書類の外側にあります書類の名称はGMOクリック証券「税金(外為オプション)」と楽天証券「確定申告時のお取引確認方法」の記載(2026年10月8日確認)。社数は当サイトの業者データ(各社の公式ページから転記。確認日2026年8月18日)を数えたものです

申告のときに使う年間の損益は、各社が発行する書類で確認します。GMOクリック証券は外為オプションについて、取引で発生した損益をまとめた「年間損益報告書」を毎年年初に発行すると書いています。楽天証券はらくオプについて、マイページの報告書から「期間損益報告書」をダウンロードでき、そこに表示される「課税対象となるバイナリーオプション取引における損益金合計額の証明書」の購入金額・受取金額・その他の合計金額を年間利益として記入すると説明しています。

ここで押さえておきたいのは、これらの書類に載っているのは取引そのものの損益だということです。読者が自分で払った費用は、業者が作る書類には入りません。GMOクリック証券の税金ページには「利益の合計額から手数料などの必要経費を控除した額が課税対象になります」という記載がありますが、手数料以外の費用を誰が集計するのかという話にはなっていません。書類が示すのは総収入金額の側で、必要経費の側は自分で用意することになります。

その手数料についても、国内のバイナリーオプションでは状況が少し特殊です。当サイトが取引条件を記録している国内の取扱6社のうち、5社は公式ページで取引手数料を「無料」または「0円」と公表しています(確認日2026年8月18日・再確認の周期90日)。残る1社は、公式の取引概要に手数料の記載を確認できませんでした。手数料が無料なら、手数料として引く額もありません。業者へ払う手数料を経費の中心に置いて考えると、実態と合わなくなります。

業者 当サイトが転記した手数料の記載
GMOクリック証券(外為オプション) 取引手数料0円/口座開設・維持費用0円
楽天証券(らくオプ) 取引手数料 無料
みんなのオプション(トレイダーズ証券) 取引手数料・口座管理費 無料
GMO外貨(オプトレ!) 取引手数料 無料/入金・出金手数料 無料(外貨ex口座との振替)
外為どっとコム(外貨ネクストバイナリー) 取引手数料 無料
IG証券(バイナリーオプション) -

値はいずれも各社の公式ページの表記をそのまま記録したもので、出典URLと確認日は比較・口座選びに併記しています。IG証券の「-」は、取引概要に手数料の記載を確認できなかったという意味で、手数料の制度が無いという意味ではありません。なお、オプションを買うときに払う購入価格は手数料ではなく取引の元になる金額です。ペイアウトとの関係はペイアウトと利益の関係に分けて書いています。

国税庁の条件が求めているのは「区分の根拠」のほう

手元のレシートを2人で確認し、支払いの内容と金額を照らし合わせている様子のイメージ写真
家事関連費の条件は「取引の記録などに基づいて」と書かれており、金額の証明と区分の説明が対になります。この写真はイメージで、特定の事業者の画面や日本の申告書類を写したものではありません。写真: Anna Tarazevich(Pexels)

もう一度、家事関連費の条件の文言を見てください。「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合」とあります。金額を払ったことの証明と、業務ぶんを切り出した根拠は別のものです。領収書は前者しか示しません。後者が無い支出は、金額が分かっていても条件の後半を満たしません。ここが、経費の話が「レシートを集める」で終わらない理由です。

では後者は何で示すのか。条件が「取引の記録など」と書いているので、支出の側だけでなく取引の側の記録と突き合わせられる形が想定されていると読めます。いつどの回号を何件取引していたのか、その時間にその設備や回線を何に使っていたのか。これは年が明けてから思い出せるものではありません。チャートの振り返りを記録に残すで扱っている取引の記録が、ここで別の役目を持ちます。

逆に言えば、区分の根拠を作れない支出は、最初から候補から外して考えるほうが早いということでもあります。経費を増やす工夫より、区分を説明できる支出だけを拾うほうが、判断がぶれません。年間の損益のほうは各社の書類で足りるため、自分で用意するのは費用の側だけです。書類の名称は社ごとに違うので、自分が使っている業者の表記で、その年のうちに手元へ保存しておいてください。

相手が国内の登録業者かどうかという前段の確認は業者の登録を確認する手順にまとめています。相手方が条件を満たさない取引は、そもそもこの計算の枠に入りません。

経費について、当サイトが確認できなかったこと

品目ごとの可否は、この記事では1件も示していません。パソコン、通信費、書籍、セミナー、家賃の一部といった支出について、経費として認められるかどうかを書いた国税庁の記載を、今回の調査では見つけられませんでした。見つからなかったものを「一般にはこう言われています」と書き足すと、読者が当サイトの推測を根拠として使ってしまいます。空けてあるのは、そのためです。

区分の割合についても、目安になる数値はありません。国税庁No.2210にあるのは「取引の記録などに基づいて」「明らかに区分できる場合」という条件だけで、何割までという線は示されていません。当サイトで割合の計算例を作ると、それが基準のように読まれるため載せていません。

様式の中身は読めていません。確定申告書に添付する「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」という名称がNo.1522とNo.1523に書かれていることは確認しましたが、様式そのものはPDFで提供されており、当サイトの取得環境では文字を取り出せませんでした。この記事が「必要経費」という言い方をしているのは、No.1500とNo.2210で使われている用語に合わせたためで、様式の欄名を示したものではありません。どの欄に何を書くかは、国税庁のページから様式と手引きを開くか、所轄税務署に確認してください。

業者側では、税務に関する公式ページを読んだのがGMOクリック証券と楽天証券の2社だけです。手数料の記載は6社ぶん転記しましたが、残る4社が年間の損益をどの名称の書類で出しているのかは確認していません。各社が税務署へ提出する支払調書についても、GMOクリック証券の記載を見たにとどまります。税金カテゴリの他のテーマは税金から、当サイトが使っている一次情報の基準は情報源についてから辿れます。

この記事の出典

金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。