RSIは0から100の間で動き、70以上なら買われすぎ、30以下なら売られすぎ。各社の解説ページに共通して書かれている説明です。数字の範囲が決まっていて、線が上下する幅も限られているので、チャートの下に置くと判断が進んだように見えます。
ただ、その数値をバイナリーオプションの注文に持ち込む前に、計算式を1度だけ見ておく価値があります。RSIが計算しているのは値幅の「割合」で、値幅そのものの大きさは、割り算の途中で消えているからです。
一方、バイナリーオプションの結果は割合では決まりません。GMOクリック証券の取引ルールには「回号終了時点の判定価格に基づいて自動的に権利行使・権利消滅が判定されます」と書かれています(2026年9月5日確認)。判定価格が権利行使価格より上か下か、つまり価格が特定の1点をまたいだかどうかという、幅の問題です。
この記事で確認するのは4つです。RSIの式が何を入力にして何を出しているのか。同じ70でも値動きの幅がどれだけ違いうるのか。期間を変えると同じ瞬間の数値がどう変わるのか。そして、強いトレンドで70以上に張り付く現象が、なぜ式の上で必ず起きるのか。勝率や必勝法は扱いません。参照した公表資料に、その根拠となる記載が無いためです。
RSIは「上げ幅が全体の何割か」を計算している
RSIの計算式は、複数の会社が公表しています。楽天証券のマーケットスピードのオンラインヘルプは、次の式を載せています(2026年9月5日確認)。
RSI=直近N日間の上げ幅合計の絶対値/(直近N日間の上げ幅合計の絶対値+下げ幅合計の絶対値)×100
外為どっとコムの解説も同じ形です。「一定期間(14日間)の上昇幅の合計÷(一定期間(14日間)の上昇幅の合計+一定期間(14日間)の下落幅の合計)×100」と書かれています(2026年9月5日確認)。
考案者についても記載があります。みんなのFXは「W・ワイルダー氏によって考案されたもので、相場のモメンタムを表す代表的なテクニカル指数」とし、「0%から100%の間で推移し、一般に70%以上は買われすぎ、30%以下は売られすぎとみる」と説明しています。GMOクリック証券のプラチナチャートの説明では「RSIは、過去の値動き幅に対する上昇幅の割合をグラフ化したもので、「買われ過ぎ」、「売られ過ぎ」を見るためのテクニカル指標です」となっています(いずれも2026年9月5日確認)。
式を数字で追うと、この指標の性格がはっきりします。
直近9本のうち、上がった足の値幅を合計すると0.070円、下がった足の値幅を合計すると0.030円だったとします。分子は0.070、分母は0.070+0.030で0.100。割ると0.7、100を掛けて70.0です。
ここから、注文の前に確認できることが2つ出てきます。
1つめは、答えが必ず0〜100の範囲に収まることです。分子は分母の一部なので、比率は0を下回らず1を超えません。上げしか無ければ分母と分子が一致して100、下げしか無ければ分子が0になって0です。数値が枠の中に収まっているのは、相場がそういう性質だからではなく、そう作られた式だからです。
2つめは、幅の大きさが割り算で消えることです。0.070と0.030という値幅は、分子と分母の両方に入っています。両方を10倍しても100倍しても、比率は変わりません。RSIが答えているのは「上げと下げのどちらが優勢か」であって、「どれだけ動いたか」ではないということです。
同じ「70」でも、動いた幅は10倍違うことがある
この2つめの性質は、バイナリーオプションでは無視できません。判定に効くのは幅そのものだからです。
ケースAは、1本あたり0.010円前後しか動かない相場です。上げ7本の合計が0.070円、下げ2本の合計が0.030円で、RSIは70.0。9本を通した正味の値動きは0.040円です。
ケースBは、1本あたり0.100円前後動く相場です。上げ7本の合計が0.700円、下げ2本の合計が0.300円で、RSIはやはり70.0。正味の値動きは0.400円で、Aの10倍あります。
ここで権利行使価格を持ち込みます。GMOクリック証券の取引ルールには、「基準となる権利行使価格は各回号の注文受付が開始される1分前の為替レートを、対円通貨ペアであれば小数第二位、対ドル通貨ペアであれば小数第四位を四捨五入することにより決定されます」とあり、値幅と本数については「中長期的な為替相場の変動から、回号開始直後から極端に高いペイアウト倍率とならないよう設定しております」と書かれています(2026年9月5日確認)。権利行使価格は、そのときのレートの近くに、決められた刻みで並べられるわけです(権利行使価格とは)。
仮に、選んだ権利行使価格が現在のレートより0.100円上にあったとします。ケースAの相場では、9本かけても0.040円しか上がっていません。ケースBなら0.400円で、すでに超えています。RSIはどちらも70.0で、この違いをまったく示していません。
判定は「上がったかどうか」ではなく、「決められた価格を、決められた時刻に、どちら側で迎えたか」で決まります(判定価格とは)。RSIの数値には、その距離が入っていません。
期間を変えると、同じ瞬間の数値が変わる
式のNは、何本ぶんを集計するかを決める数字です。この値に決まりはなく、会社によって初期値が違います。
外為どっとコムは「RSIの期間設定に決まりはありませんが、14日間が一般的です。これはRSIの開発者である「J.Wワイルダー」氏の研究結果から、あらゆるものには「28日周期」があるということからその半月である14日間が採用されました」と説明しています。一方、楽天証券のマーケットスピードのヘルプでは、RSIのパラメータの初期値は9日です(いずれも2026年9月5日確認)。
同じチャートの同じ瞬間でも、Nが違えば数値は変わります。仮定の値で計算してみます。
| 集計する範囲 | 上げ幅の合計 | 下げ幅の合計 | 計算 | RSI |
|---|---|---|---|---|
| 直近9本 | 0.040円(4本) | 0.060円(5本) | 0.040 ÷ 0.100 × 100 | 40.0 |
| 直近14本 | 0.140円(9本) | 0.060円(5本) | 0.140 ÷ 0.200 × 100 | 70.0 |
直近9本だけを見ると、下げのほうが多く、RSIは40.0です。古い5本を含めた14本で見ると、その5本がすべて上げだったぶん分子が増え、70.0になります。同じ画面を見ていて、片方は「売られすぎ寄り」、もう片方は「買われすぎの水準」です。
Nは、どこまでさかのぼるかを決める設定だと考えると分かりやすくなります。短くすれば直近の動きだけが反映されて数値が振れやすく、長くすれば古い動きが残って変化がゆるやかになります。どちらが正しいという公表資料はありません。
もう1つ、バイナリーオプション特有の注意があります。Nは「本数」なので、実際に何時間ぶんを集計しているかは足種で変わります。5分足に14本なら70分、1時間足に14本なら14時間です。1回号は最長でも3時間しかないため、足種によっては回号1つより長い時間を1つの数値にまとめていることになります。この換算の考え方は移動平均線の記事で詳しく扱っています。足種そのものの選び方はチャート時間足の選び方にまとめています。
強いトレンドでは70以上に張り付く。式を見れば理由が分かる
RSIを逆張りの根拠として使う説明は、各社のページにも出てきます。外為どっとコムは「一般的にRSIが70%を超えた場合は買われすぎと判断でき、売りのサインとなります。逆に30%を下回った場合は売られすぎと判断でき、買いのサインとなります」と書いています。GMOクリック証券は「買い傾向と見るのは、RSIが30%以下の状態でレートが反転したとき、売り傾向と見るのは、RSIが70%以上の状態でレートが反転したときです」と、レートの反転を条件に加えた書き方をしています(いずれも2026年9月5日確認)。
同じページに、限界も書かれています。外為どっとコムは「強いトレンドが発生すると70%以上で張り付きそのまま価格が上昇する可能性があります」、GMOクリック証券は「強いトレンドが出た場合、上下どちらかに張り付いてしまい機能しなくなるというデメリットもあります」と記載しています。
この「張り付き」は、相場の気まぐれではありません。式から必ずそうなります。
上げ幅の合計を0.070円に固定したまま、下げ幅の合計だけを小さくしていきます。0.030円ならRSIは70.0、0.010円なら87.5、0.005円なら93.3、0.002円なら97.2、押し目がまったく無ければ100.0です。分母の中の下げ幅が小さくなるほど、比率は1に近づきます。
つまり、価格が一方向へ進み続けている間は、RSIは高い位置に留まり続けます。数値が高いことは「そろそろ反転する」ことを意味しません。そのとき起きているのは「押し目が小さい」ということだけです。70を超えたから逆側を買う、という使い方が難しいのはここです。
IG証券は、価格とRSIの向きが食い違う場面を挙げています。「価格は安値を切り下げているのに、RSIが安値を切り上げている場合、ポジティブダイバージェンス」「価格は高値を切り上げているのにRSIは高値を切り下げている場合、ネガティブダイバージェンス」という説明です(2026年9月5日確認)。楽天証券のヘルプにも、新高値・新安値にRSIが追従しない場合を判断材料として挙げる記載があります。ただし、こうした食い違いが起きた後に価格がどうなるかを、確率つきで示した公表資料は見つけられませんでした。
RSIを出せる画面かどうかは、口座によって違う
ここまでは式の話でしたが、実務では先に確かめることがあります。自分が使う口座の画面にRSIがあるかどうかです。バイナリーオプションの取引ツールは、FX用のチャートとは別に用意されていることがあり、載っている指標もそれぞれです。
| 会社(参照したページ) | 指標名の記載 | RSIの記載 |
|---|---|---|
| GMOクリック証券「iClick外為OP」 | 移動平均線、ボリンジャーバンド、MACD、RCI、スーパーボリンジャー、スパンモデル、一目均衡表 | 確認できませんでした(RCIは記載あり) |
| 楽天証券「らくオプ」 | 参照したページでは確認できませんでした | 確認できませんでした |
| みんなのオプション「取引ツール」 | 参照したページでは確認できませんでした | 確認できませんでした |
| 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー」 | 参照したページでは確認できませんでした | 確認できませんでした |
| GMO外貨「オプトレ!」 | 参照したページでは確認できませんでした | 確認できませんでした |
| IG証券「チャート機能」 | 「33のテクニカル指標と19のライン描画ツール」(RSIを含む一覧を掲載) | 記載あり(バイナリーオプション専用ページではありません) |
とくに注意したいのが1行目です。GMOクリック証券のバイナリーオプション用ツール「iClick外為OP」の案内ページには、RCIは載っていますが、RSIの記載は確認できませんでした。名前は1文字違いですが、別の指標です。同社のプラチナチャートの説明では、RCIは「過去の一定期間のレートと日数にそれぞれ順位をつけ、2つの順位相関を計算し、「買われ過ぎ」、「売られ過ぎ」を見るためのテクニカル指標です」と書かれています(2026年9月5日確認)。値幅を足すRSIと、順位を比べるRCIでは、入力しているものが違います。
記載が見つからなかった会社についても、「使えない」と決めつけないでください。ツールの画面や取引マニュアルに書かれている場合があります。確実なのは、デモ取引や実際の画面で指標の一覧を開いて確かめることです。各社が公表しているデモ取引の有無や取引条件は国内登録業者の比較に並べています。
注文の前に確定していること、していないこと
RSIから確定するのは、集計した範囲での上げ幅と下げ幅の比率です。式が公表されているので、同じ足種・同じ期間なら誰が計算しても同じ値になります。ここまでは客観的な数字です。
確定していないのは、その先です。金融庁の注意喚起には「相場を正確に予測することは難しいうえ、一定時間後のレートをピンポイントで高い確度で予測することは非常に困難です」と書かれています(2026年9月5日確認)。バイナリーオプションが問うているのはまさに「一定時間後のレート」であり、RSIはそこへ答えを出す道具ではありません。
同じページには「バイナリーオプションは、取引の仕組みが単純で、騰落を予想するだけの簡単な取引のように見えますが、実際は複雑な理論的根拠に基づく金融取引です」「合理的な投資判断を行うためには、オプション取引に関する専門知識や高度なリスク管理が必要です」という記載もあります。指標を表示すると判断が速くなり、取引の回数が増えやすくなります。
そして、1回あたりの損失は購入した金額までに限られます。GMOクリック証券の場合、1枚あたりの購入価格は約50円〜999円と案内されています(当サイトで2026年8月18日に確認)。ただし、限度があるのは1回ぶんの話です。回数を重ねれば、その分だけ資金は減っていきます。この両面については損失が限定される仕組みと投資リスクについてにまとめています。
なお、金融庁は「取引を始める前に、取引の相手が金融商品取引法の登録を受けている業者であることを必ず確認してください」とも書いています。RSIの設定を調整する前に確認する事項として、こちらのほうが先です。
よくある質問
RSIの期間は9と14のどちらが正しいですか
どちらが正しいと示した公表資料は見つけられませんでした。外為どっとコムは「期間設定に決まりはありませんが、14日間が一般的です」と説明し、その理由をワイルダー氏の28日周期の研究から半月ぶんを採ったためだと書いています。楽天証券のマーケットスピードでは初期値が9日です。表1のとおり、同じ時点でも数値は変わります。どちらを使うにしても、いま画面に出ている数値が何本ぶんの集計なのかを把握しておくほうが先です。
RSIが70を超えたらLOW(下がる方)を買えばいいですか
そう判断できる根拠を、参照した公表資料の中に見つけられませんでした。各社の解説は70以上を買われすぎの水準として紹介していますが、外為どっとコムは「強いトレンドが発生すると70%以上で張り付きそのまま価格が上昇する可能性があります」とも書いています。図3のとおり、押し目が小さいほどRSIは100へ近づきます。数値が高いこと自体は、反転の予告ではありません。
RSIで勝率が上がる設定はありますか
勝率を示した公表資料はありません。金融庁は「「絶対勝てる」「確実に儲かる」「すぐ簡単に稼げる」などの勧誘をうのみにしないでください」と注意喚起しています(2026年9月5日確認)。RSIの計算式は各社が公開していて、国内の登録業者のツールにも標準で載っている場合があります。有料の情報商材を買わなければ使えないものではありません。
RCIとRSIは同じものですか
別の指標です。GMOクリック証券のプラチナチャートの説明では、RSIは「過去の値動き幅に対する上昇幅の割合」、RCIは「過去の一定期間のレートと日数にそれぞれ順位をつけ、2つの順位相関を計算」するものと、それぞれ独立して説明されています(2026年9月5日確認)。表示名が似ているため、画面で選ぶときに取り違えないよう注意してください。
MACDや移動平均線と組み合わせれば根拠は強くなりますか
RSI、MACD、移動平均線は、いずれも同じ足の価格データから作られます。表示を増やしても、材料そのものが増えるわけではありません。組み合わせを推奨する記載は各社のページにもありますが、その組み合わせで結果がどう変わるかを数値で示した公表資料は見つけられませんでした。
RSIで分かること、分からないこと
RSIから分かるのは、集計した範囲で上げ幅と下げ幅のどちらが優勢だったか、その比率です。式は公表されていて、0から100の範囲に収まることも、押し目が小さいほど100へ近づくことも、計算から確かめられます。ここは推測の入る余地がありません。
分からないのは、価格が権利行使価格まで動くかどうかです。比率を出す過程で幅の大きさが消えているため、RSIが70でも、9本の正味の値動きが0.040円のことも0.400円のこともあります。判定時刻に価格がどちら側にいるかは、幅の問題です。
だからRSIを見るときに答えが出るのは、「いま画面に出ている数値は、何本ぶんの、どちら向きの偏りを表しているのか」までです。そこから先を「上がりそう」「下がりそう」に翻訳する部分には、公表された根拠がありません。式で確かめられる範囲と、確かめられない範囲を分けて扱うことが、この指標を使ううえでの線引きになります。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- 楽天証券「マーケットスピード オンラインヘルプ RSI」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- みんなのFX(トレイダーズ証券)「RSI」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- 外為どっとコム「RSIとは?基本的な見方やFXでの使い方を解説」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- GMOクリック証券「プラチナチャート テクニカル指標の説明(オシレーター系)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- IG証券「相対力指数(RSI)とは?」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- IG証券「チャート機能|テクニカル分析」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- GMOクリック証券「外為オプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- GMOクリック証券「iClick外為OP」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- GMOクリック証券「外為オプションのはじめかた」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年8月18日
- 楽天証券「バイナリーオプション(らくオプ)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- みんなのオプション「取引ツール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- GMO外貨「オプトレ!」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月5日
- 金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」 金融庁 / 確認日 2026年9月5日