公的機関に報告されている「バイナリーオプション詐欺」は、相場を読めたかどうかの話ではありません。誰と取引し、どこへ振り込むかの話です。金融庁は投資詐欺の手口を8つに分けて公表しており、入金の場面についてはっきりと「入金の際に証券会社が個人名義の銀行口座を指定することはありません」と書いています(2026年10月2日確認)。振込先の名義が業者名か個人名かという1点は、専門知識がなくても自分で確かめられます。
誤解を防ぐために線を引いておきます。国内で金融商品取引法の登録を受けた業者が提供するバイナリーオプションは、それ自体が詐欺ではありません。一方で、登録を受けた業者で取引しても損失は出ます。金融庁はその点も別に注意喚起しており、商品としてのリスクはバイナリーオプションのリスクで扱いました。詐欺の話と、商品のリスクの話は別の層にあります。この記事は前者だけを扱います。
この記事で確認できるのは3つです。1つめは、金融庁と国民生活センターの公表資料に出てくる手口が、接触から出金拒否までどのようにつながっているか。2つめは、入金する前に確認できる4つの点。3つめは、相談窓口ごとに受け付ける範囲と、できないことの違いです。登録の調べ方そのものは業者の登録を確認する手順、何が法律上の違反になるのかはバイナリーオプションは違法かに分けて置いています。
公表資料の手口は、接触から出金拒否まで一続きになっている
入口は複数あります。金融庁が挙げているのは、動画投稿サイトの広告等からSNSのクローズドチャットへ誘導される形、AI診断を謳い文句にして誘導される形、国内に登録のない海外FX業者をSNS上で紹介する形などです。入口の見た目はそれぞれ違いますが、到達点は同じで、入金させることに向かっています。だから入口の数を覚えるより、入金の場面で何を確認するかを決めておくほうが実用的です。
勧誘の段で使われるものには、著名人名義のアカウント、成功談を投稿するサクラ、キャッシュバックなどの特典の強調が挙げられています。登録に関する細工もあります。金融庁は、金融商品取引業者を騙る事例として登録番号を詐称しているケースを挙げ、海外FX業者を紹介する事例では、無登録業者として当局が警告を行っているものを含むと明記しています。つまり「登録番号が書いてある」ことは確認の終わりではなく、照合の出発点にすぎません。
入金と出金の段には、読者が自分で判定できる材料があります。金融庁は、証券会社が個人名義の銀行口座を入金先に指定することはないとしています。国民生活センターは、取引画面上では利益が出ているように見えても、画面自体が架空で実際には取引されていない場合があると説明しています。画面上の数字は、入金の正当性を裏づける材料になりません。そして出金を申し出た段で、応じてもらえない、あるいは税金や手数料の名目で追加の振込を求められる、という形が共通して報告されています。
金融庁が並べている8つの手口と、当てはまる段階
金融庁は投資詐欺の手口を8つの見出しで公表しています(2026年10月2日確認)。見出しは原文のまま引用し、右の列は当サイトが図1の段階に対応づけたものです。対応づけは当サイトの整理で、金融庁がそう分類しているわけではありません。
| 手口の見出し(金融庁の表記) | 対応する段階(当サイトの整理) |
|---|---|
| 動画投稿サイトの広告等からSNSのクローズドチャットへ誘導され、投資への勧誘が行われる事例 | 接触 |
| AI診断を謳い文句に誘導され、投資への勧誘が行われる事例 | 接触 |
| 国内に登録のない海外FX業者をSNS上で紹介している事例 | 接触・勧誘 |
| 金融商品取引業者を騙っている事例 | 勧誘 |
| 高速取引行為者(HFT業者)を騙っている事例 | 勧誘 |
| 政府公認の投資プログラムを騙るサイトから誘導する事例 | 接触・勧誘 |
| 特典や褒賞などをきっかけに投資へ誘い込む事例 | 勧誘 |
| 特別待遇されているものと思わせ、投機心や射幸心を煽ることで投資へ誘い込む事例 | 勧誘 |
8つのうち3つが、実在する事業者や制度の名前を借りる形です。金融商品取引業者を騙る、高速取引行為者を騙る、政府公認の投資プログラムを騙る。いずれも相手の説明を読んで真偽を判断することが、構造上できない類型です。名前を借りられた側の公式ページや、当局の一覧にあたる以外に確かめる方法がありません。
バイナリーオプションの勧誘で特に関係が深いのは3つめです。金融庁は海外FX業者をSNS上で紹介する事例について、キャッシュバックキャンペーンなどの特典を強調していると書いています。バイナリーオプションも同じ経路で紹介されます。金融庁はバイナリーオプションの注意喚起でも、SNSや友人を通じて勧誘され、高額な情報商材を購入したうえで海外の無登録業者と取引して多額の損失が出た、という相談が増えていると述べています。
件数は公表されているが、バイナリーオプション単独の数字は見つからない
警察庁は、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数を9,538件、被害額を1,274.7億円と公表しています(2026年2月13日公表の暫定値、2026年10月2日確認)。前年比はそれぞれ3,125件の増加(48.7%増)、403.6億円の増加(46.3%増)です。接触手段では、バナー等広告が3,760件で859件の増加(29.6%増)、ダイレクトメッセージが3,576件で1,443件の増加(67.7%増)でした。同じ資料では、SNS型ロマンス詐欺が5,604件・552.2億円と、別の枠で集計されています。
ここで正確に書いておきます。この9,538件のうち、バイナリーオプションを名目にしたものが何件かは、当サイトでは確認できませんでした。警察庁の集計は「SNS型投資詐欺」という枠で、株式・暗号資産・FXなどの名目別の内訳を当サイトは確認していません。したがって、この数字はバイナリーオプション詐欺の件数ではなく、同じ入口を使う詐欺全体の規模として読んでください。
読み取れるのは増え方の偏りです。バナー等広告が29.6%増に対し、ダイレクトメッセージは67.7%増でした。広告は不特定多数に向けたものですが、ダイレクトメッセージは1人に宛てて届きます。個別に届いた話のほうが、増加が速いという形になっています。知り合いや同じ投資グループの参加者から勧められる経路は、国民生活センターの相談事例でも繰り返し出てきます。
「必勝法」や自動売買ツールの販売は、情報商材の相談として記録されている
金融庁は、バイナリーオプションの注意喚起の中で、高額な情報商材を購入させられたという相談に触れています。国民生活センターは情報商材を「インターネットの通信販売等で、副業、投資やギャンブル等で高額収入を得るためのノウハウ等と称して販売されている情報」と定義し、相談件数を年度別に公表しています(2026年7月31日時点の集計、2026年10月2日確認)。
| 年度 | 情報商材の相談件数 |
|---|---|
| 2023年度 | 6,256件 |
| 2024年度 | 4,163件 |
| 2025年度 | 2,623件 |
| 2026年度(7月31日まで) | 182件(前年同期285件) |
件数は3年続けて減っています。ただしこの表は情報商材全体の件数で、バイナリーオプションに関するものが何件かは示されていません。減少を「バイナリーオプションの必勝法の販売が収まった」と読むことはできません。公表されているのは枠全体の数字だけです。
当サイトが勝率や必勝法を数字で書かないのは、この種の商材と同じ土俵に乗らないためです。確率の話をするときは、計算式と前提を画面に出し、仮定であることを明記します。考え方はバイナリーオプションのリスクと資金管理の記事に分けて置いています。「この手法で勝率◯%」という形の数字は、出所を示せないかぎり書けません。
出金できなくなった場面で、実際に言われていること
国民生活センターが公表している相談事例から、入金後に出金を求めた段で何を言われたかを並べます。名目はバイナリーオプションに限らず、海外FX、暗号資産、未公開株にまたがります。同じ形が商品を変えて繰り返されていることが分かるため、あえて並べました。
| 名目 | 公表・受付 | 当事者 | 支払った額 | 出金の際に言われたこと |
|---|---|---|---|---|
| バイナリーオプション | 2019年10月24日公表 | 20歳代女性 | 10万円(クレジットカード決済) | ボーナスも含めた入金額の3倍以上の取引がないと出金できないという規約だと判明 |
| 海外FX | 2024年5月30日公表 | 70歳代 | 計700万円(個人名義の口座へ振込) | 海外取引税として約160万円を振り込まないと出金できない |
| 暗号資産 | 2025年8月受付 | 50歳代女性 | 約1,000万円 | 出金時に500万円の税金の納付を求められた |
| 未公開株 | 2025年8月受付 | 50歳代男性 | 約1,000万円 | 出金時に約1,100万円の手数料を請求された |
4件に共通するのは、出金の条件が、入金したあとに出てくるという順序です。取引の条件として先に示されていれば、入金する前に判断できます。入金後に初めて示されるなら、判断の材料は相手の説明しかありません。1件目の「入金額の3倍以上の取引」はボーナスを含めた金額を基準にしており、取引を続けさせる形になっています。
金額の桁が違う点にも触れておきます。10万円の事例と約1,000万円の事例が同じ表に並んでいます。少額から始められることは、少額で終わることを意味しません。出金のために追加の振込を求められる形では、最初に入れた金額が被害額の上限になりません。追加の振込を求められた時点で、応じる前に相談窓口へ連絡するのが先です。
振り込む前に確認できる4つの点
1つめは登録の確認です。金融庁は、海外で金融商品取引のライセンスを持つ業者であっても、日本で登録を受けずに日本に居住する者に対して金融商品取引を業として行うことは禁止されていると書いています。確認は、相手の公式ページに書かれた商号と登録番号を控えて、金融庁の一覧と照合する形で行います。手順は業者の登録を確認する手順にまとめました。
ここで、警告リストの読み方を間違えないようにしてください。金融庁の「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」は、平成22年1月以降に警告書を発出した者を掲載するもので、2026年9月25日に更新されています。同庁は掲載されている無登録業者は警告書の発出を行った時点で無登録営業を行っていることが確認できた者に限られ、掲載されていない者でも無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ると注記しています。載っていないことは、登録があることの証明にはなりません。
2つめは振込先の名義です。前述のとおり、金融庁は証券会社が個人名義の銀行口座を指定することはないとしています。国民生活センターも、通常のFX取引で個人名義の口座を使って入金させることはなく、振込先に個人名義の口座を指定された場合は詐欺の可能性が高いとしています。3つめは勧誘の言葉です。金融庁は「絶対勝てる」「確実に儲かる」といった勧誘を信じないよう求めています。4つめが出金条件の出てくる順序で、前節の4件がその具体例です。
相談窓口は役割が違う。どこへ何を頼めるか
窓口の名前を並べただけでは役に立ちません。受け付ける範囲と、できないことまで含めて並べます。連絡先と受付時間は各窓口の公表ページで確認した表記です(2026年10月2日確認)。確認できなかった項目は「-」にしています。
| 窓口 | 主に受け付けるもの | できないこと・対象外 | 連絡先 |
|---|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 国民生活センターが相談先として案内している消費生活相談の窓口 | - | 188 |
| 警察相談専用電話 | 金融庁と国民生活センターが相談先として案内している警察の窓口 | - | #9110 |
| 金融庁 金融サービス利用者相談室 | 個別トラブルについて、他機関の紹介や論点の整理などのアドバイス | あっせん・仲介・調停は行わない | 0570-016811(IP電話は03-5251-6811)平日10時00分〜17時00分、ウェブは24時間 |
| 証券取引等監視委員会 情報提供窓口 | 情報提供の受付 | - | 0570-00-3581 |
| FINMAC | 加入第1種金融商品取引業者・協定事業者・特定事業者の業務に関する相談、苦情、紛争解決のあっせん | これらの団体の会員でない業者の業務は受け付けない | 0120-64-5005 月〜金曜日9時00分〜17時00分 |
この表でいちばん重要なのはFINMACの行です。FINMACの協定事業者には一般社団法人金融先物取引業協会が含まれており、同協会の会員である国内のバイナリーオプション取扱業者との間のトラブルは、あっせんの対象になりえます。一方でFINMACは、これらの団体の会員でない業者の業務に関する相談、苦情の受付および紛争解決のあっせんは行っていないと明記しています。無登録の相手との取引は、この制度の外に出ます。登録の有無が最も具体的に効くのがこの場面です。
金融庁の金融サービス利用者相談室は、相談室のページで0570-016811(IP電話は03-5251-6811)、受付は平日10時00分から17時00分、ウェブサイトは24時間と案内しています。できることとして個別トラブルのアドバイスや他機関の紹介を挙げる一方、あっせん・仲介・調停は行えないと明記されています。同庁の注意喚起ページには別の番号(0570-050588)が案内されています。電話をかける前に、相談室のページで番号を確かめてください。
国内の登録業者がどのような条件を公表しているかは比較ページにまとめています。当サイトは無登録業者・海外業者への口座開設を案内しません。金融先物取引業協会も、無登録の海外所在業者によるFX取引やバイナリーオプション取引等の勧誘について、金融庁から注意喚起が出ているとして同庁のページを案内しています。
よくある質問
国内の登録業者と取引していれば、詐欺に遭うことはありませんか
登録業者との取引でも、相手が本当にその業者かどうかは別の問題です。金融庁は手口の一覧に「金融商品取引業者を騙っている事例」を挙げ、既存の業者名を使い、登録番号を詐称して偽のサイトへ誘導する形があるとしています。したがって、業者名を見て安心するのではなく、自分でたどった公式ページから手続きを始めることが確認になります。検索結果の広告やダイレクトメッセージで送られたリンクから入ると、この確認が働きません。
金融庁の警告リストに載っていない業者なら大丈夫ですか
大丈夫とは言えません。金融庁は、掲載されているのは警告書の発出時点で無登録営業を確認できた者に限られ、掲載されていない者でも無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ると注記しています。名称が現時点のものでない場合があるとも書かれています。警告リストは「載っていたら取引しない」と判断するための材料で、安全を確認する材料ではありません。登録の有無は登録業者側の一覧で確かめます。
振り込んでしまったお金は返ってきますか
返るかどうかを当サイトが判断することはできません。公表資料で確認できるのは、無登録業者とのトラブルは追及が困難であるという金融庁の記載までです。できるのは、追加の振込に応じないことと、記録を残して窓口へ相談することです。やり取りの画面、振込の控え、相手の名乗った商号と登録番号を保存してから、消費者ホットライン188または警察相談専用電話#9110へ連絡してください。
この記事で確認できなかったこと
- バイナリーオプションを名目にした詐欺だけの件数。警察庁の集計はSNS型投資詐欺の枠で、名目別の内訳を当サイトは確認していません
- 情報商材の相談件数のうち、バイナリーオプションに関するもの。国民生活センターの公表は情報商材全体の件数です
- 返金の可否と実際の回収率。公表資料で確認できたのは、追及が困難であるという記載までです
次に進むなら、取引しようとしている相手の登録を業者の登録を確認する手順で確かめるところからです。法律上どの行為が禁止されているのかを先に知りたい場合はバイナリーオプションは違法か、国内と海外で制度として何が変わるのかは国内業者と海外業者の違いにまとめています。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- 金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」 金融庁 / 確認日 2026年10月2日
- 金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」 金融庁 / 確認日 2026年10月2日
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」 金融庁 / 確認日 2026年10月2日
- 金融庁「金融サービス利用者相談室」 金融庁 / 確認日 2026年10月2日
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」 公的機関 / 確認日 2026年10月2日
- 国民生活センター「無登録業者とのバイナリーオプション取引は行わないで!」 公的機関 / 確認日 2026年10月2日
- 国民生活センター「SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!?金融商品・サービスのトラブルにご注意!」 公的機関 / 確認日 2026年10月2日
- 国民生活センター「情報商材」 公的機関 / 確認日 2026年10月2日
- 国民生活センター 見守り情報「SNS上の投資グループ内で勧誘されるFX取引に注意」 公的機関 / 確認日 2026年10月2日
- 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)「当センターが対象とする事業者」 自主規制団体 / 確認日 2026年10月2日
- 一般社団法人金融先物取引業協会「無登録の海外所在業者による勧誘に関する注意喚起」 自主規制団体 / 確認日 2026年10月2日