国内のバイナリーオプションの期待値は、1,000円 × 仮定した勝率 − 購入価格で出ます。600円のオプションを「10回のうち6回は当たる」と見て買うなら、1,000円 × 0.6 − 600円 で0円です。同じ600円を55%と見るなら −50円、65%と見るなら +50円になります。1単位あたりの金額で、各社が公表しているペイアウト1,000円と、いま画面に出ている購入価格の2つだけで計算できます。
この数字を読むときに、押さえておきたい点が2つあります。1つめは、期待値が「1回あたり平均で何円か」を表す数字で、実際の1回の結果としては出てこないことです。上の例で1回の結果になりうるのは +400円 か −600円 のどちらかで、0円という結果は存在しません。2つめは、式の中で自分が決めているのは勝率だけだということです。1,000円は固定され、購入価格は画面に出ています。期待値の確からしさは、勝率をどう置いたかでそのまま決まります。金融庁は、バイナリーオプションについて「一定時間後のレートをピンポイントで高い確度で予測することは非常に困難です」としています(2026年9月28日確認)。
この記事では、式がなぜこの形になるのかを確率の足し算から確かめ、価格と勝率の組み合わせで1回あたりいくらになるかを一覧にし、符号が反転する境目と、どう置いても正にならない条件を見ます。そのうえで、前提が崩れる場面と、勝率という仮定の置き方を扱います。「何%勝てば釣り合うか」というしきい値そのものは損益分岐点にまとめてあるので、ここでは金額の側から見ていきます。
期待値は「結果 × 確率」を足したもの
期待値は、起こりうる結果それぞれに、その結果が起きる確率をかけて、全部足した値です。サイコロの目の期待値が3.5になるのと同じ計算で、バイナリーオプションは結果が2つしかないため、足すのは2項だけで済みます。
国内の各社は、受け取る額を固定して、支払う額のほうを動かしています。みんなのオプションは「予測どおりになった場合には1Lotあたり一律1,000円のペイアウトが受け取れます」「予測どおりにならなかった場合には、チケット購入金額と同額が損失となります」と書いています(2026年9月28日確認)。GMOクリック証券は取引ルールでペイアウトを「1枚につき1,000円(固定)」、取引手数料を「0円」としています。
そうすると、購入価格を C、当たる確率を w と置いたとき、当たったときの損益は 1,000円 − C、外れたときは −C です。期待値はこの2つを確率で重みづけして足したもので、w ×(1,000円 − C)+(1 − w)×(−C)になります。展開すると 1,000w − wC − C + wC となり、wC どうしが打ち消し合って 1,000円 × w − C が残ります。式がここまで短くなるのは、外れたときにも支払い済みの購入価格が効いていて、両側の C が整理されるためです。
図1の例では、購入価格600円を勝率60%と見ています。当たりの寄与が +240円、外れの寄与が −240円 で、足すと0円です。見立てを55%へ5ポイント下げると、寄与は +220円 と −270円 になり、期待値は −50円 になります。つまり勝率が1ポイント動くと、1回あたりの期待値は10円動きます。1,000円の1%だからです。
単位の呼び方は会社ごとに違い、1枚・1Lot・1口と分かれます。呼び方が変わっても、1単位あたり1,000円という点は共通です。購入価格そのものの決まり方は購入価格とは、率という言葉の使われ方はペイアウト率とはで扱いました。
価格と勝率の組み合わせで、1回あたりいくらになるか
式だけでは金額の大きさが見えにくいので、代表的な価格帯と勝率の組み合わせを並べます。すべて1単位あたり、手数料0円、判定時刻まで保有した場合の計算です。
| 仮定した勝率 | 購入価格100円 | 購入価格300円 | 購入価格500円 | 購入価格700円 | 購入価格900円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20% | +100円 | −100円 | −300円 | −500円 | −700円 |
| 40% | +300円 | +100円 | −100円 | −300円 | −500円 |
| 60% | +500円 | +300円 | +100円 | −100円 | −300円 |
| 80% | +700円 | +500円 | +300円 | +100円 | −100円 |
| 期待値が0円になる勝率 | 10% | 30% | 50% | 70% | 90% |
表の値は、1,000円 × 仮定した勝率 − 購入価格 として当サイトが計算したものです。各社が公表している数字ではありません。どの列も、勝率が20ポイント上がるごとに期待値が200円ずつ増えます。どの行も、購入価格が200円上がるごとに200円ずつ減ります。期待値は勝率にも価格にもまっすぐ比例して動き、途中で急に折れる点はありません。
いちばん下の行は、期待値がちょうど0円になる勝率です。購入価格を1,000円で割った値で、この表では10%・30%・50%・70%・90%になります。置いた勝率がこの行より高ければ期待値は正、低ければ負です。
購入価格を600円に固定して勝率だけを動かすと、図2のように棒が等間隔で並び、60%のところで符号が入れ替わります。価格を変えると、この入れ替わる位置だけが左右へ動きます。900円なら90%、100円なら10%です。図の形そのものは変わりません。
ここで気をつけたいのは、左端の「勝率40%で −200円」も、右端の「勝率80%で +200円」も、同じ確からしさで起きるわけではないことです。この図は「もしその勝率で当たるなら」という仮定を横に並べた一覧で、どの列が自分に当てはまるかまでは示していません。当てはまる列を決める作業が、この記事の後半で扱う勝率の置き方です。
期待値が負になる条件は3つある
期待値が負になるのは、次の3つのどれかに当たるときです。
- 置いた勝率が「購入価格 ÷ 1,000円」を下回っている
- 購入価格がペイアウトと同じ1,000円になっている
- 手数料など、式に入れていない費用がかかっている
1つめが基本形です。600円のオプションを55%と見れば −50円、900円のオプションを80%と見れば −100円 になります。しきい値の側から同じことを見る計算は損益分岐点にまとめました。
2つめは、価格が上限にぶつかる場合です。購入価格が1,000円なら期待値は 1,000円 × w − 1,000円 となり、w をどれだけ高く置いても0円が上限です。100%当たっても差額が残りません。外為どっとコムは、この状態を規程で明示的に禁じています。「当社注文受付時点で購入価格が、ペイアウト額と同額の1,000円だった場合は、経済合理性を欠くものとなるため、購入できません」(2026年9月28日確認)。ほかの3社が公表している購入価格の上限は、みんなのオプションが1Lotあたり990円、GMO外貨が1口あたり990円(刻み値10円)、楽天証券が1枚あたり999円で、いずれも上限そのものが1,000円に届きません。
3つめは費用です。この記事の計算は手数料0円として組み立てています。GMOクリック証券が「0円」、楽天証券・GMO外貨・外為どっとコムが「無料」、みんなのオプションが「各取引の取引手数料及び口座管理費は無料です」と公表しています(いずれも2026年9月28日確認)。手数料がかかる商品であれば、その額をそのまま期待値から引きます。
そして、手数料が無料であることと、費用がゼロであることは別です。楽天証券は取引価格の決定方法として「原資産価格、権利行使価格、原資産のボラティリティ、権利行使期間、原資産の金利を用いて算出した理論値に、当社のリスクプレミアム(当社収益)をスプレッドとして加味した値をオプションの取引価格として提示します」と説明しています(2026年9月28日確認)。
つまり、画面に出ている購入価格は理論値そのものではなく、上乗せが入った値です。理論値どおりの確率で当たったとしても、その上乗せのぶんだけ期待値は0円より下になります。ただし、幅は公表されていません。いくら下がるのかを数字にすることはこの記事ではできず、「ゼロではない向きに効いている」ところまでが、公表されている記載から言えることです。推定値を置いて計算を埋めることはしません。
期待値どおりの金額は、1回の取引には出てこない
期待値を0円と計算しても、0円という結果は起きません。1回の結果は +400円 か −600円 のどちらかだけです。平均値そのものが結果として現れないのは、テストの平均点をちょうど取った人が必ずしもいないのと同じです。
では何回くらい重ねれば平均に近づくのか。近づく速さは回数の平方根で決まります。購入価格500円・仮定勝率50%(期待値0円)で1単位ずつ買った場合、1回の損益は +500円 か −500円 で、ばらつきの目安である標準偏差は500円です。各回が独立しているとすると、これを n 回ぶん重ねたときの合計のばらつきは 500円 × √n、1回あたり平均のばらつきは 500円 ÷ √n になります。
100回なら、合計のばらつきは5,000円、1回あたり平均のばらつきは50円です。1,000回なら合計15,811円、1回あたり16円になります。回数を重ねると1回あたり平均は期待値に近づきますが、資金が受ける合計の振れ幅は逆に大きくなります。「たくさんやれば平均に落ち着く」という理解だけで回数を増やすと、この2つ目の動きを見落とします。金融庁が「短期間に繰り返し取引した結果、多額の損失を被るおそれがあります」と注意喚起しているのも、回数そのものが合計の振れ幅を広げるためです。
具体的な例を1つ挙げます。期待値0円・勝率50%で100回取引したとき、合計がちょうど0円になるのは50勝50敗のときだけで、その確率は約8%です(各回が独立しているとした二項分布の計算値)。残りの約92%は、プラスかマイナスのどちらかへ振れます。期待値が0円だというのは、プラスとマイナスが同じくらい起きるという意味であって、0円に収まりやすいという意味ではありません。
なお、1回あたりの金額を資金全体の何%に収めるかは、期待値とは別の判断です。期待値は「その価格を買うかどうか」の材料で、「いくら買うか」は資金との比率で決めます。口数の決め方は資金管理の基本、1回の購入代金の逆算は1回いくらで取引するかにあります。
計算の前提が崩れる場面
ここまでの式は、いくつかの前提の上に立っています。前提が外れる場面では、そのまま使えません。
| 前提が崩れる場面 | 計算にどう効くか | 確認できる公表記載 |
|---|---|---|
| 判定を待たずに途中で売却した | 損益は「売却価格 − 購入価格」になる。当たり外れの2択ではなくなり、この式は当てはまらない | 外為どっとコム「1Lotあたり0円~約1,000円で変動」(売却価格) |
| 発注までに価格が動いた | 購入価格が変われば期待値も変わる。発注する時点の価格で計算し直す | 金融先物取引業協会「取引期間中は価格が変動」 |
| 取引手数料がかかる | かかる額をそのまま期待値から引く | 国内の各社は「0円」または「無料」と公表 |
| 複数口をまとめて買う | 期待値は口数倍になるが、1回で確定する損失額も口数倍になる | GMO外貨「最大購入可能口数」は投資可能金額の区分ごとに設定 |
| 勝率を短い記録から置いた | 仮定そのものが外れている可能性がある | 金融庁「一定時間後のレートをピンポイントで高い確度で予測することは非常に困難です」 |
| IG証券で取引する | 価格の単位が違うため、1単位1,000円の式は当てはまらない | IG証券「0から100の間で価格が0.1刻みで表示されます」 |
なかでも見落としやすいのが、いちばん上の途中売却です。判定を待たずに売ると、損益は売却価格と購入価格の差で決まります。当たり外れの2択ではなくなるため、1,000円 × 勝率 − 購入価格 という式の形そのものが当てはまりません。外為どっとコムは売却価格を「1Lotあたり0円~約1,000円で変動」としています。売却の扱いは途中売却とはにまとめました。
IG証券だけは、はじめから単位の取り方が違います。価格は金額ではなく「0から100の間で価格が0.1刻みで表示されます」という形で提示され、ペイアウトは0.1ロットで10,000円、1ロットで100,000円と公表されています(損益通貨が日本円の場合)。さらに新規の売付ができ、その場合は受け取るプレミアムが最大利益、ペイアウトからプレミアムを差し引いた額が最大損失になると説明されています。1単位1,000円を前提にした式を、そのまま持ち込めません。各社の条件の並びは国内6社の比較にあります。
いちばん難しいのは、勝率をどう置くか
式の中で、1,000円は固定され、購入価格は画面に出ています。自分で決めているのは勝率だけです。裏を返せば、期待値がプラスになるかどうかは勝率の置き方だけで決まります。ここを都合よく置けば、期待値はいくらでもプラスにできてしまいます。
勝率を置くときにまず知っておきたいのは、価格のほうが先に確率を織り込んでいることです。みんなのオプションは「目標レートに達する可能性が高い場合はチケット価格は高くなり、可能性が低くなればチケット価格も安くなります。また、判定時間までの残り時間なども、チケット価格に影響しています」と説明しています(2026年9月28日確認)。安い価格は「割安」ではなく、「達する可能性が低いと見られている」状態です。
だから「購入価格 ÷ 1,000円 より高い勝率」を置くことは、価格が織り込んでいる見方より自分の見方のほうが正しい、と主張していることになります。その主張を数字と根拠で説明できないなら、期待値の計算をプラス側へ寄せる理由はありません。金融庁は予測の困難さを指摘したうえで、「安いオプション料に惹かれペイアウトを受け取る可能性が低い取引を選好し」た結果、「短期間に繰り返し取引した結果、多額の損失を被るおそれがあります」と注意喚起しています。安い価格ほど期待値がプラスに見えやすい一方で、その勝率を実際に満たすのは難しい、という関係になっています。
表示のしかたにも規制があります。金融先物取引業協会の取扱ルール(2013年8月1日から適用)は、ペイアウト倍率を「ペイアウト額をオプション価格で除した値」と定義したうえで、それ「を中心に表示し、お客様と取引することは禁止」としています。ただし、顧客が投資判断に活用すること自体は制限されないとも書かれています(2026年9月28日確認)。倍率は期待値を考える材料になりますが、倍率の大きさだけを前面に出された状態で判断させられることは避けられている、と読めます。
そして、高い勝率を売り物にする話には注意が必要です。金融庁は、友人やSNSを通じて「儲かる」と勧誘され「バイナリーオプション取引の分析ツールが入ったUSBなど高額な情報商材を購入」した事例を挙げ、「『絶対勝てる』『確実に儲かる』『すぐ簡単に稼げる』などの勧誘をうのみにしないでください」としています。期待値の式は、勝率を上げる方法を何も教えません。置いた勝率が正しかったときに何が起きるかを計算するだけの道具です。
自分の記録から勝率を置く場合も、回数が少なければ仮定としては使えません。前の節で見たとおり、100回重ねても1回あたり平均は50円ほど揺れます。10回や20回の勝率をそのまま式に入れると、たまたまの並びを見込みとして扱うことになります。記録の残し方は取引の振り返りを記録に残すで扱いました。
まとめ:式は短く、難しいのは勝率の側
国内のバイナリーオプションの期待値は、1,000円 × 仮定した勝率 − 購入価格 で出ます。勝率が1ポイント動けば10円、5ポイントなら50円動きます。負になるのは、置いた勝率が「購入価格 ÷ 1,000円」を下回るとき、購入価格がペイアウトと同じ1,000円のとき、そして式に入れていない費用がかかるときの3つです。
使うときに覚えておきたいのは2点です。期待値は1回あたり平均の数字で、1回の結果としては出てこないこと。そして、式で自由に動かせるのは勝率だけで、その勝率を置いた根拠が計算の質をそのまま決めることです。価格については、理論値にリスクプレミアムをスプレッドとして加味した値が提示されると公表されており、その幅は公表されていません。計算の結果がわずかにプラスだとしても、見込める利益として扱えるものではありません。
購入価格・ペイアウト・手数料・取引ルールは変更されます。口座を開く前と、しばらく取引していなかったときは、各社の公式ページで確かめてください。当サイトの数値の扱いは情報源について、取引に伴うリスクは投資リスクについてに整理しています。ほかの計算は資金管理・確率から辿れます。
この記事の出典
金額・時刻・取引ルールは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、取引の前に各社の公式ページで確かめてください。
- 金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」 金融庁 / 確認日 2026年9月28日
- 一般社団法人金融先物取引業協会「個人向け通貨関連店頭バイナリーオプション規制について 取扱ルールの概要」 自主規制団体 / 確認日 2026年9月28日
- GMOクリック証券「外為オプション 取引ルール」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月28日
- 楽天証券「らくオプ サービス概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月28日
- みんなのオプション「購入価格とペイアウト」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月28日
- GMO外貨「オプトレ!のお取引ルール(取引概要)」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月28日
- 外為どっとコム「外貨ネクストバイナリー 取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月28日
- IG証券「バイナリーオプション取引概要」 取扱業者の公式ページ / 確認日 2026年9月28日