バイナリーオプションで儲けが出た場合の税金支払いについて悩んでいる投資家の方も少なくありません。今回はバイナリーオプションの税金について解説します。
バイナリーオプションの税金は国内業者と海外業者で違う!
まず理解しておく必要があるのは
- 国内バイナリーオプション業者で儲けた場合に支払う税金
と
- 海外バイナリーオプション業者で儲けた場合に支払う税金
は「税金の考え方も、税率も、違う」ということです。
なぜ、違うの?
以前は同じでしたが、2011年度税制改正修正法が可決され、2012年1月1日から国内バイナリーオプションに関する税率が優遇されることになったのです。これは政府の「国民の投資を活性化させたい。」という意向を反映したものです。NISAなどの税制優遇も含めて、資産運用の選択肢を広げる目的で導入されたものです。
2012年以前
- 国内バイナリーオプション業者 → 総合課税
- 海外バイナリーオプション業者 → 総合課税
2012年以降
- 国内バイナリーオプション業者 → 申告分離課税
- 海外バイナリーオプション業者 → 総合課税
となったのです。
国内バイナリーオプションの税金
申告分離課税とは?
を言います。
つまり、国内バイナリーオプションで得た収益は、他の所得(給与、不動産投資の賃料収入・・・)とは分離して、計算されるのです。
国内バイナリーオプションの税率
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%(平成39年末まで)
合計:20.315%
国内バイナリーオプションの税金計算
課税所得 = 国内バイナリーオプションの利益 - 国内バイナリーオプションに利用した経費
税額 = 課税所得 × 20.315%
申告分離課税の場合は利益の大小にかかわらず「一律」でこの税率が適用されます。
例えば
国内バイナリーオプションで100万円の利益が出た場合
バイナリーオプション関連の購入:5万円
バイナリーオプション関連のセミナー参加:5万円
バイナリーオプション用のタブレット購入:10万円
利益:100万円 - 経費:20万円 = 課税所得:80万円
80万円 × 20.315% = 税額:16万2520円
となります。
一律ですので
課税所得が
- 50万円 → 50万円 × 20.315% = 税額:10万1575円
- 100万円 → 100万円 × 20.315% = 税額:20万3150円
- 200万円 → 200万円 × 20.315% = 税額:40万6300円
・・・
と簡単に計算することが可能です。
国内バイナリーオプションの税金優遇制度
国内バイナリーオプションには申告分離課税という税金の優遇措置以外にも、優遇措置があります。
3年間の損失繰越が可能
国内バイナリーオプションの税制では「3年間の損失繰越」が可能になっています。
- 1年目:100万円の損失
- 2年目:損益は±0円
- 3年目:40万円の利益
という場合には
損失繰越がなければ
- 1年目:100万円の損失 → 税金:0円
- 2年目:損益は±0円 → 税金:0円
- 3年目:40万円の利益 → 税金:8万1260円
損失繰越があると
- 1年目:100万円の損失 → 税金:0円
- 2年目:損益は±0円 → 税金:0円
- 3年目:40万円の利益(2年前の-100万円と相殺、利益が出ていないことに) → 税金:0円
となるのです。3年目は40万円の利益が出ていますが、2年前の100万円の損失が繰り越されているので、利益と相殺して税金は発生しないのです。単純掲載ではまだ60万円分の損失が残りますが、最大3年ですので、4年目に残りの60万円の損失は繰り越せません。
※損失繰越を利用する場合には確定申告が必須となります。
他の金融商品との損益通算が可能
- FX
- くりっく365
- CFD
- 商品先物
- 日経225先物
- TOPIX先物
など
の金融商品と損益通算が可能です。
- 国内バイナリーオプションで50万円の利益
- 国内FXで50万円の損失
の場合、損益通算でプラスマイナス0円ですから、税金は発生しません。
海外バイナリーオプションで50万円の利益
国内FXで50万円の損失
国内バイナリーオプションで50万円の利益
海外FXで50万円の損失
の場合は前述した通りで税金の分類が違うので、損益通算はできないので注意が必要です。
国内バイナリーオプションの税金はどうやって支払うの?
確定申告をします。
確定申告とは
です。
給与所得だけの方は会社が代わりに「源泉徴収+年末調整」という形で申告をしてくれているので、確定申告が不要ですが、給与所得以外にバイナリーオプションやその他の所得がある方でかつ以下の条件に該当する方は確定申告が必要になります。
- 給与所得以外の所得(利益)が20万円を超える方
- 給与所得がない方で所得控除(38万円)を超えた所得(利益)がある方
- 給与所得が2000万円を超える方
- 損失の繰越控除の適用を希望する方
出典:外為オンライン
海外バイナリーオプションの税金
総合課税とは?
対象となる所得の種類は
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
海外バイナリーオプションの所得というのは「雑所得」に分類されます。国内バイナリーオプションは申告分離課税なので上記には含まれません。
で計算されるのが総合課税です。
給与所得も総合課税ですので、「海外バイナリーオプションで儲けた所得」は「給与所得」と同じ計算方法で税金が決まってくることになります。
海外バイナリーオプションの税率
所得税
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
復興特別所得税
所得税額 × 2.1%
住民税
市区町村民税 | 課税される所得金額×6% | 均等割り(自治体ごとに違う) |
都道府県民税 | 課税される所得金額×4% | 均等割り(自治体ごとに違う) |
海外バイナリーオプションの税金計算
1.給与所得の計算
2.所得控除額の計算
- 給与所得控除
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 住宅ローン控除
・・・
など各種の控除額を計算します。
給与所得控除額
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 550,000円に満たない場合には550,000円 |
1,800,000円超~3,600,000円以下 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,000円超~6,600,000円以下 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,000円超~8,500,000円以下 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,000円超 | 1,950,000円(上限) |
3.課税所得の計算
4.調整控除額の計算
課税所得が200円万以下
- 所得税との人的控除額の差の合計
- 課税される金額
課税所得が200円万超
- 所得税との人的控除額の差の合計
- 課税される金額-200万円
※基礎控除・扶養控除・障害者控除・寡婦控除などの「人」に関する所得控除のことを「人的控除」と言います。
5.税金計算
所得税 = 課税される所得金額 × 税率 - 控除額
復興特別所得税 = 所得税 × 2.1%
住民税 = 課税される所得金額 × 10% + 均等割(自治体ごと) - 調整控除額
税額合計 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
となります。
計算例
- 給与所得:400万円
- 海外バイナリーオプション所得:100万円(利益-経費)
の場合
- 給与所得:400万円
- 給与所得控除:138万円
- 海外バイナリーオプション所得:100万円
その他の控除額の計算
社会保険料等 = 280,000円
生命保険料控除 = 40,000円
扶養控除 = 380,000円(一般扶養親族のうち年齢16歳以上の者1人につき38万円)
基礎控除 = 380,000円
控除額合計 = 1,080,000円
課税所得 = 400万円(給与) + 100万円(海外バイナリー) - 138万円(給与控除) - 108万円(その他控除) = 254万円
所得税
254万円 × 税率:10% - 控除額:9万7500円 = 所得税:15万6500円
復興特別所得税
所得税:15万6500円 × 2.1% = 復興特別所得税:3,286円
住民税
住民税の場合は所得税と控除額が違うので計算をし直す必要があります。
控除額を出しなおす(※所得税と住民税では控除額が異なるため)
控除額
社会保険料等 = 280,000円
生命保険料控除 = 25,000円
扶養控除 = 330,000円(一般扶養親族のうち年齢16歳以上の者1人につき33万円)
基礎控除 = 330,000円
控除額合計 = 965,000円
265.5万円 × 税率:10% + 均等割り:4,000円 - 調整控除額:2500円 = 住民税:267,000円
海外バイナリーオプションの税金優遇制度
国内バイナリーオプションの「損失繰り越し」「損益通算」は使えません。
また、
と思ってしまうかもしれませんが
国税庁:No.2250 損益通算
「配当所得、給与所得、一時所得及び雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。」
となっていて、損益通算はできません。
ただし、「不動産所得」と「事業所得」の損失に関しては、雑所得から「不動産所得と事業所得の損失」を差し引くことが出来ます。
不動産投資、事業で赤字になったら、バイナリーオプションの利益と損益通算することができるということです。
海外バイナリーオプションの税金はどうやって支払うの?
確定申告をします。
これは国内バイナリーオプションと同じです。
給与所得以外にバイナリーオプションやその他の所得がある方でかつ以下の条件に該当する方は確定申告が必要になります。
- 給与所得以外の所得(利益)が20万円を超える方
- 給与所得がない方で所得控除(38万円)を超えた所得(利益)がある方
- 給与所得が2000万円を超える方
- 損失の繰越控除の適用を希望する方
国内バイナリーオプションと海外バイナリーオプションで税金面で有利なのは?
国内バイナリーオプションの方が税金面では損失繰越などがある分、有利に設計されています。
ただし、バイナリーオプションの儲けが少ない場合は海外バイナリーオプションの税率は20%を切り、控除も使えるので、一律で20%の国内バイナリーオプションの税金と比較すると有利になります。
しかし、バイナリーオプションの儲けが多い場合には、海外FXバイナリーオプションの税率は20%を超えるので、国内バイナリーオプションの税金と比較すると不利になります。
税率は条件によって変わってしまうため、一概には言えませんが
給与、バイナリーオプション、その他の収入から計算される課税所得が695万円以下の場合
海外バイナリーオプションの税金の方が安くなる可能性が高い
給与、バイナリーオプション、その他の収入から計算される課税所得が695万円超の場合
国内バイナリーオプションの税金の方が安くなる可能性が高い
となります。
バイナリーオプションの税金対策
バイナリーオプションの税金を減らすためには「経費を増やす」ことが重要です。
自宅でバイナリーオプションをしているのであれば、家賃の全額は無理でも、バイナリーオプションに利用している部屋の賃料分は経費になる可能性が高いですし、バイナリーオプションに利用しているパソコンの購入費用も経費として計上できる可能性が高いのです。
どれが経費にできて、どれが経費にならないのか?
は専門の税理士に相談するべきですが、バイナリーオプションで稼ぐために使った費用は概ね経費として認められます。
例えば
- バイナリーオプションをしている部屋や事務所の賃料の一部
- バイナリーオプションで利用しているパソコンやタブレット、スマホの端末費用
- バイナリーオプションに使うwifiや光回線
- バイナリーオプション業者との連絡で使う携帯電話
- バイナリーオプションのセミナー参加費
- バイナリーオプションのセミナーなどに参加するための交通費
- バイナリーオプション関連書籍代
- バイナリーオプション仲間との情報交換のための接待交際費
- 机やイスなどの家具
- PC周辺機器
・・・
などです。
税理士によって、どこまでが経費の範囲になるのかは判断が異なるので、税額が大きくなる場合は相談することをおすすめします。
同時に経費計上する支払いの領収書は、確定申告の際に提出する必要があるため、保管しておく必要があります。
まとめ
国内バイナリーオプションの税金
- 申告分離課税:一律20.315%
の税金が発生します。
ただし、
- 3年間の損失繰越
- 他の金融商品損失通算
が利用できます。
海外バイナリーオプションの税金
- 総合課税:給与所得などと合算して0%~55%
の税金が発生します。
- 課税所得が多ければ多いほど、国内バイナリーオプションの税金の方が有利になります。
- 課税所得が少なければ、海外バイナリーオプションの税金の方が有利になります。
「バイナリーオプションの税金って国内業者と海外業者で違うの?」
「どうやって税金を支払えば良いの?」